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2012年3月12日掲載   
キッコーマン(株)
「トマト種子由来サポニン:トマトシドA」のコレステロール上昇抑制作用を確認

~2012年3月24日の日本農芸化学会大会で発表~

キッコーマン株式会社は、グループ会社である日本デルモンテ株式会社と共同で、トマトの機能性について長年研究を続けてまいりました。昨年、トマト種子中にサポニンの一種である「トマトシドA」が存在し、その「トマトシドA」がコレステロール上昇抑制作用を有することを動物実験で確認しました(*1)。

今回は、この「トマトシドA」について、品種による含有量の違いや、動物試験での有効量、作用メカニズムなどについて、さらなる検討を加えた結果、「トマトシドA」のコレステロール上昇抑制作用は、コレステロール吸収阻害と代謝促進が複合的に作用している可能性のあることが分かりました。

研究成果は3月22~26日に京都市で開催される日本農芸化学会2012年度大会で発表します。

発表する研究内容の概要は以下の通りです。

先ず、5種類のトマトの「トマトシドA」含有量をLC/MS/MS(*2)を用いて測定しました。トマト果実1個あたりの「トマトシドA」含有量は、約1~5mgで品種間に差があり、トマト果実中の種子重量に比例する傾向が見られました。今後、「トマトシドA」を高含有する品種の選抜などを進めていく予定です。

次に、雄性マウス(C57BL6、6週齢)を用いて、高コレステロール食を対照に、高コレステロール食に「トマトシドA」の配合率が0.004%、0.02%、0.1%となるように混ぜた餌を28日間与えて、血中のコレステロール濃度の変化を調べました。

その結果、「トマトシドA」を混ぜた餌を投与したすべての群で、対照群に比べて、血中のコレステロール濃度の上昇が有意に抑制され、その効果は0.004%という低い配合率でも確認されました。このことは、「トマトシドA」が強いコレステロール上昇抑制作用を持っていることを示しています。

また、「トマトシドA」 を投与したマウスでは、糞中のコレステロール排泄量が多くなった一方で、肝臓でのコレステロールの蓄積量が有意に少なくなっていました。そこで、「トマトシドA」投与マウスにおいて、肝臓でコレステロールの代謝に関与する酵素であるCholesterol- 7α-hydroxylase(*3)のmRNA(*4)発現量を調べたところ、有意に高くなっていることが分かりました。

これらの結果から、「トマトシドA」のコレステロール上昇抑制作用は、コレステロール吸収阻害と代謝促進が複合的に作用している可能性が考えられました。

以上のことから、「トマトシドA」は、強いコレステロール上昇抑制作用を有することがわかり、「トマトシドA」を摂取することは、脂質異常症(*5)やメタボリックシンドローム(*6)の改善に有用であることが期待されます。

キッコーマングループは、今後とも食品と健康の関連について研究を進め、「食と健康」の分野で「お客様の生活を豊かにする」独創的な新製品開発と新技術開発を進めてまいります。

(*1)山中孝雄ら 日本農芸化学会2011年度大会
(*2)LC/MS/MS
    LC/MSは、高速液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析計(MS)を結合した装
    置。LCで試料中の成分を分離し、分離した成分をMSでイオン化して質量の違いで
    検出する。LC/MS/MSは、MSの検出部を2つ直列に配置して、2段階で成分をイオ
    ン化するため、成分選択性が高い。化合物の構造解析において多くの情報を得る
    ことができるだけでなく、高感度の定量が可能であるため、食品や医薬品分野な
    どで幅広く用いられている。
(*3)Cholesterol-7α-hydroxylase
   (コレステロール・7アルファー・ヒドロキシラーゼ)
    肝臓において、コレステロールを代謝して胆汁酸を生合成する初期段階の反応を
    触媒する酵素の1つ。
(*4)mRNA
    タンパク質合成のため、細胞の遺伝情報に基づいて合成される物質。遺伝情
    報を写し取ってそれを伝える、情報伝達の役割を担う。
(*5)脂質異常症
    血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる病気のこと。
(*6)メタボリックシンドローム
     内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以
    上をあわせもった状態。これらが併発すると、動脈硬化が急速に進行するといわ
    れている。

【関連ホームページ】
 http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/12023.html?kh=top0305