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第30回:つくばコングレスセンター
つくば国際会議場内観
 つくばサイエンス・アカデミー(SAT)は、つくば国際会議場(以下、会議場)内にオフィスをお借りしていますが、この会議場は茨城県が設置し、江崎玲於奈博士が館長を務めておられます。機器管理、会場設営、清掃など会議場の実際の運営は、関係7機関から成る「つくばコングレスセンター」という運営団体の手で実施されています。運営は非常になめらか、会議場を利用された方は、快適な利用環境を実感しておられると思います。コングレスセンターの7機関はすべて、SAT賛助会員、私どもにとって大変有難い存在です。
 平成23年3月7日(月)、賛助会員訪問に代えて、つくばコングレスセンターメンバーの皆さんにお集まりいただき、懇談会形式のインタビューとさせていただきました。席上、日ごろのご支援に御礼を申し上げるとともに、会議場運営が技術的にどのように変化してきたのか、さらには、より効果的で作業者にも優しい技術のあり方はどうか、そんなことを聞かせていただきました。
(溝口コーディネーター、野上事務局長、酒井事務局員)。
 7機関の担当業務、出席者は以下のようです。(順不同:敬称略)

機関名担当業務出席者
つくば国際会議場全体管理総務企画課長関山 篤志
JTB営業・広報事業開発部マネージャー福島 正通
高橋興業(株)設備保守業務責任者久保田 文雄
(株)クレフ照明・音響・映像技術主任大木 美徳
テスコ(株)清掃つくば支店岡田 均
藤本和子
(株)つくばエッサ会場設営設営担当須崎悦生
(株)セノン警備つくば国際会議場警備隊隊長荻 真紀


 いつものように、SATの概要説明をしたあと、共通の質問で7機関それぞれからご発言をいただきました。

Q:本日はご多用中にお集まりいただき、まことに有難う存じます。SATでは賛助会員の皆様を訪問させていただき、訪問記をホームページに掲載させていただいております。これは、賛助会員の皆様にお礼を申し上げたいのと、SATの設立目的が異分野の交流・それにもとづく知の触発ということですので、賛助会員各機関の事業内容を広く会員の皆様に知っていただこう、そういう趣旨で行っております。また、それぞれがお持ちの技術シーズ・ニーズをご紹介することも大切なことに思っております。今回はつくばコングレスセンターの会員の皆様は、同じこの会議場にお勤めですので、無理を言ってお集まりいただきました。
 各社の担当業務については、上記のように理解していますが、そういう理解でよいか、合わせて、この10年間の技術面での変化などについてお話いただきたいと思います。まず会議場事務局の方から、最近の会議場の動向というか、営業実績あるいは会議場の特徴のようなものをお話いただけたらと思います。

会議場:平成18年に私ども財団(※)と本日出席されている6社とともに「つくばコングレスセンター」を設立し、指定管理者として「つくば国際会議場」の管理運営にあたってきました。4月からもお蔭様で指定管理を受け2期目に入ります。
 昨年度はリーマンショックの影響もあり営業実績はやや下がってしまいましたが、今年度は皆様の努力のおかげで一昨年以上の成果を上げることができそうです。
 また、少し古いデータですが平成20年度においては48件の国際会議が開かれました。これは会議場施設としては全国2位になります。毎週1回は国際会議がこの地で開かれ、多くの外国の方々がつくばに訪れる、まさに国際交流、科学技術の交流の拠点、情報の発信源としての役割を果たしているということでしょうか。
 (※)財団法人茨城県科学技術振興財団

つくば国際会議場内観

JTB:イベント内容の質が高いように思いますね。

高橋興業(以下、高橋):私どもは、冷暖房などの設備を管理しています。室温を24℃に保つようにしているのですが、会議参加者は暑い国からも寒い国からも来られますし、男女の別もあります。席によっても違いますし、満足していただくのはなかなか難しいところがあります。

セノン:私どもは警備担当です。お客様は外国人が多いですし、アカデミックな雰囲気ですね。警備で立っていると、いろいろ聞かれることもあるのですが、英語圏でない人もおられますし、会話はジェスチャーですね。

テスコ:清掃担当のテスコです。私どももよく話しかけられますが、身振り手振りですね。

エッサ:会場設営を担当しています。最近は会議件数が増えたので、深夜設営や会議合間の短時間での設営が多くなっています。地元企業ですので、アルバイト登録者を多くリストアップし、柔軟に対応しています。
また、会議の当日のレイアウト要望にもすぐに対応できるよう、シフトを組み常駐しています。

クレフ:10年間での変化についてですが、学会や会議等でのプレゼンテーションに使用する機材が全く変わりましたね。一昔前まではOHPやスライドフィルムだったのですが、今ではほとんどがパソコンになっています。他の機器についても音響調整卓や照明操作卓、ビデオデッキなどあらゆるところでデジタル化が進んでいます。機器がデジタル化されることで小型・多機能になり作業の能率は上がっています。その反面、機器がCPU制御されているので、その部分が故障すると、すべてがフリーズしてしまうというリスクもあります。実際、某劇場で機器がフリーズして催事ができなかったという話を聞いたことがあります。そういう事態に備えてバックアップ機器は用意しています。さすがにデジタルの機器になるとメーカーも制御プログラムまでは公開してくれないので、私どもにできることはデータのバックアップとかファームフェアのバージョンアップくらいですね。そこで私どもでは最低限催事が進行できるだけの機器を用意しています。バックアップ機器ではたとえばビデオデッキなどはアナログです。個人的にはアナログ機器の方が何となく安心感がありますね。
 今後、ワイヤレスマイクのデジタル化など規格が変わることがあれば更新が必要になります。そういう意味で要望はたくさんありますね。

つくばコングレスセンターの皆様

高橋:私たちは設置された機材で高い性能を出すようにしている。たとえば運転の仕方で使用エネルギーが違うので、技術者として省エネに努力しているわけです。ダウンライトはLED照明に替えました。60W電球はLEDでは6W、費用はLED球の費用で済みます。さすが国際会議場であると、これに気づいてくれる人もいます。ホワイエでは27W蛍光灯を使っていますが、これに合うLEDを取り付けるとなると器具ごとに交換となり、かなり高価となってしまいます。これは今後の課題です。
 この会議場の温調設備はすばらしい。冬でも温水・冷水が流れるようになっています。ですが、冬には冷水は使いません。外気を使うのです。ところが10℃以下になると、自動では外気が入らなくなります。それを自分たちでやっています。
 要望として、ほかの研究所ではいろいろな機器の更新時期をどのようにしておられるのでしょうか、そういう情報が欲しいですね。

セノン:今は、安全があたりまえではなくなっています。個人情報も問題です。たとえば監視カメラの映像をどうするか?今のところカメラの性能が高くないのですが、性能が高くなった場合の対処の仕方が問題になります。
 駐車場の設備は良くなりましたね。アナログがデジタルになったおかげで、不具合のために駐車場から呼び出されることが少なくなりました。逆に駐車券が雨にぬれるとカードリーダーがうまく働かない、といったことが起きています。

テスコ:清掃に当っては、この建物が建てられた10年前の状態を保つように、美観が保たれるように気をつけています。ゲストにもう一度利用したいと思ってほしいのです。環境保全にも気をつけていまして、洗剤の種類を変え、汚れを落とすことと同時に臭いも減らすようにしている。

大木技術主任、溝口コーディネーター、野上事務局長、須崎責任者、関山総務企画課長(写真左から)

エッサ:ゲストが会議室に入ったとき、気持ちよく使って頂けるよう机の並び、椅子の位置には特に気を配っています。また、他の施設に比べて椅子や机が重厚で、ちょっと重いのですが、移動用カートを導入するなどで業務の効率化を図っています。

JTB:興味深く話を聞かせていただきました。このようなグループでやっていく、コンソシアムのメリットはあると思います。これからはサービスクオリティをあげていくことが重要でしょう。ここは国際会議場ですから、「国際」に大きな価値がある。グローバルに対応することが大切で、ソフト面の強化が必要なのではないでしょうか?広報を強めて、今の状態をうまく引き継いで行きたいと思います。

会議場:この10年で、TV会議が入ったりして会議の形態が大きく変わってきました。科学技術の進歩は、使いやすい、便利で簡単な方向に進んでほしいものですが、直に参加者と触れ合うことができないのはさびしい気がします。画面越しに相手と討論をしても気持ちが伝わりにくい気がするのは技術についていけない言い訳かもしれませんが・・・(笑)

Q:テスコさん、皆さんのお仕事が目に付きやすいからお聞きするのですが、清掃の仕方でたとえばこういう洗剤が必要、というようなことはないでしょうか?

テスコ:たとえば滑りにくいワックス、そういうものは欲しいと思いますね。
 水にぬれると床が滑りやすいのです。

Q:1時間半を過ぎてしまいました。このあたりで本日の懇談会を終了させていただきたいと思います。本日はご多用中にお集まりいただいて本当に有難うございました。良い勉強をさせていただきました。
 またこれからも賛助会員としてSATをご支援いただきますよう、よろしくお願いいたします。


(感想)
 この訪問記を用意している最中の3月11日、東日本大震災に襲われ、当日は国際会議場で勤務していたのですが、ずいぶん怖い思いをしました。被災地域の皆さんには、心からのお見舞いを申し上げます。
会議場もあちこち被害を受け、コングレスセンターの皆さんもその修復やイベント予定変更に飛び回っておられます。
現在、会議場は福島県からの避難の皆さんを受け入れています。被災地域が一日も早く復興し、また会議場も一日も早く正常業務に復旧できるよう祈っております。

 さて、つくば国際会議場の利用環境は、繰り返しになりますが非常に快適です。そのための裏方の仕事をされるのが「つくばコングレスセンター」のメンバーの皆さんなのですが、今回お集まりいただいて、あらためて皆さんの実務に対する真摯で熱心な姿勢を感じ取りました。
 ところで、快適な会議場環境を保つためには、それを支える技術・製品が必要です。この点をお聞きしたくて、この10年間での変化という質問を出させていただきました。メンバー各社の事業内容、技術面での特徴はまずまず理解できたように思います。
会議場運営の技術面での大きな変化は、デジタル化ということになるようです。デジタルシステムはこれから一層高度化していくと思います。今回は、あまり詳しくお聞きできなかったのですが、映像・音響、情報システムなど、デジタル面で取り上げるべき具体的な技術開発項目はまだまだ多いように思いました。  既存設備の省エネ的な利用法についても興味深くお聞きしました。そういうノウハウの蓄積は、設備設計に当ってきわめて有益であるように思います。会場設営や清掃は、人手を必要とする業務ですが、この中でもたとえば軽くて丈夫な椅子の開発など、有意義なサジェスチョンがあったように思います。清掃業務から出ていた滑らないワックス、という要望も面白いものでした。
 途中で、あまり合理化が進んで、人手が削減されるのも考えものではないか、というご意見が出ていました。答えは簡単ではないでしょうが、これからも常に考えるべき重要な問題、とあらためて認識したような次第です。
(3月24日、溝口記)

つくばコングレスセンター、メンバー機関のHP



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