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第36回:関彰商事
 関彰商事は、エネルギーとカーライフを中心とした総合商社、北関東で広く事業展開しておられます。商社の事業経営においても、ITなど新しい技術がどんどん取り込まれていると思います。特に新しい分野に進出するに当って、何か新しい技術が必要になることはないでしょうか、また、商社という立場からつくばにはどんな思いを持っておられるのでしょうか、このあたりをお話しいただこうと、平成25年9月27日、同社つくば本社をお訪ねしました(事務局長篠田、溝口)。
 ご存知の方も多いと思いますが、関彰商事は江崎賞の副賞スポンサーとしてSATの活動を支援してくださっています。江崎賞はナノテクを対象とした表彰事業で、SAT活動の中核のひとつです。大変有難いことですが、この江崎賞とのご縁についてもお伺いしたいと思います。
 江崎賞についてお礼を申し上げた後で、Q&Aが始まりました。

Q:ホームページを見せていただくと、事業内容としてエネルギー、カーライフ、ホームライフ、ビジネスソリューションという4分野とのことですが、各分野の売り上げ、その比率あたりからお話を伺いたいと思います。
A:売り上げ比率は、原油高騰の影響もあって、最近ではエネルギー72%、ビジネスソリューション10%、カーライフ16%、ホームライフが2%です。収益面では、エネルギーは横ばいで、自動車、ビジネスが伸びている状況です。ビジネスソリューションには具体的には、PC、携帯電話、事務機器、関連ソフトなどが含まれます。
エネルギー事業

Q:エネルギー関連が大きいようですね。その中で、つくばの占める割合はどんなものでしょうか?
A:つくばエリアということでお考えいただきたいのですが、グループ売り上げの約30%を占めています。また各営業部門の本部が集まっており、新店舗開発もつくばに重点を置いています。
 当社は、茨城県内では県西・県南が強いエリアです。一方、県央・県北ではそれほどでもなく、むしろ福島での方が有名なんです。古くから漁船の燃料供給を通して、小名浜などいわきの漁港で活動させてもらいました。

Q:それは知りませんでした。さて、経営理念として地元貢献を挙げておられて、これは非常に良いことと思いますが、これからは日本全体あるいは国際化を見据えることも大切なのではないでしょうか?海外進出は考えておられないでしょうか?
A:海外進出は今のところは考えていません。日本全体を見るというと、ネットビジネスに参入していますが、事業拡大を含めてこれからの展開ですね。コンピュータのシステム開発では、お客様のご要望に沿ったソフトを開発しており、その中でも勤怠管理ソフトは全国にお客様が広がっています。

Q:新分野進出に当って何か動機というかきっかけがあるのでしょうか?
A:当社のビジネスの基礎は石油を中心としたエネルギーですが、その供給先のお客様のニーズを捕らえて、さまざまに展開してきました。たとえばLPガスや灯油を販売する、そうするとそれに必要な機器がありますし、メンテも必要です。よい住宅へのニーズもつかめます。口幅ったいですが、個人・企業・官公庁のお客様を大切にして事業展開してきています。

Q:エネルギーやビジネスソリューション関連では、研究開発部門が必要ではないでしょうか?
A:私どもは商社ですので、ソフトウエア開発など一部を除き基本的に商品そのものを開発することは稀なんです。メーカーなどが開発した商品・サービスをどのように取り入れてお客様に提供するかが課題なので、マーケティングや営業企画の部門は持っていますが、研究開発部門については今後の課題と思っています。

Q:産業・住宅分野のエネルギー機器というと、具体的にはどんなものを扱っておられますか、またメンテナンスは?
A:化石燃料以外に太陽光発電機器、メガソーラー、燃料電池などに取り組んでいます。メンテナンスも一部は自社グループで行っています。
カーライフ事業

Q:カーライフ事業では販売だけでなく修理も行っておられるのですか?整備士は育てておられるのでしょうか?
A:カーライフ事業では、修理・メンテナンスは基盤といえるくらい大切でして、整備士の育成には力を入れています。新車が全く売れなくても修理・メンテナンスで利益が出せるくらいになるのが理想ですね。

Q:ビジネスライフで医療システムの販売をうたっておられますが、具体的には?特にこの分野では専門知識が必要なように思われますが?
A:ここでは医療機器ではなく、医療事務のレセプトソフトや電子カルテなどを扱っています。また病院向けの勤怠管理システムも扱っています。医療システムでは、パッケージソフトを販売し、利用者側が使用しやすいようなサブシステムを一緒に開発し提供するという形態ですので、医療事務やシステムについての知識は必要ですが、医療そのものの知識までは必要としておりません。

Q:つくばの都市整備やエクスプレス開通にはいろいろ影響を受けられたと思いますが?
A:つくば地区の都市整備については、燃料供給、建設工事、事務機器その他影響を受けていますね。エクスプレスの開業は、当社に限らずこの地区全体として少なからず影響を受けていると思います。

Q:国際化・少子化など変化の激しい時代です。最近10年で、ビジネス上の大きな変化というと?
A:単に物を売ることからシステム売り(ソリューション、提案)に大きく変わりました。また消費からエコへとビジネスベースが変わってきています。環境配慮の会社であることが必要で、当社でも関彰エコ300ということで関連商品を増やしています。

Q:東日本大震災で大きな影響を受けられたと思います。経営上の変化、さらに復興支援について。
A:当社もガソリンスタンドや自動車販売店などで大きな被害を受けたところがあります。復旧には国や業界等の補助金を活用させていただきました。復興支援は、被災地への義捐金や被害にあった取引先への人的協力など、会社としてできる範囲で行っています。社員もボランテイアで行ってくれています。

Q:あのときから、節電がずいぶん大きく影響していると思いますが、いかがでしょうか?
A:省エネの心構えが違ってきていますね。会社としても節電に取り組み、効果を上げています。

Q:茨城は農業県でもあります。農業分野への進出は考えておられないでしょうか?
A:新規事業の候補の一つとして検討していますが、まだ具体化しておりません。
ビジネス事業

Q:技術系社員の人数はどのくらいあるのでしょうか?
A:グループ全体で非正規を加え、従業員は約2000名です。このうち技術系はシステムエンジニア30、IT(メンテナンス含め)50、自動車メカニック192、建設技術者(メンテナンス)13名、合計285名です。

Q:15%くらいということでしょうか。国際化への対応はどのように考えておられますか?外国人の社員はおられますでしょうか?
A:国際化への対応はまだ具体的には行っていません。外国人社員は、一部非正規社員はいますが、正社員にはおりません。

Q:つくば研究機関と事業展開上の交流は何かありますでしょうか?
A:中長期的な事業開発の研究のため、産総研や筑波大学などから情報提供を受けることが多いですね。逆に、研究機関から販路開拓や当社の専門のエネルギー分野について相談を受ける場合もあります。
 基本的には役に立つことで協力したいと思っています。具体的には、つくば国際戦略特区のバイオ燃料開発で、藻類培養池のメンテに協力しています。

Q:商社の立場から、研究開発シーズを育てる、ベンチャーを支援するということはありますでしょうか?
A:大学発ベンチャーに対して、人的・資金的な支援を実施した実績があります。具体的には、筑波大学のたんぱく質応用ベンチャーであるMCBI支援、つくばウェルネスリサーチとのソフト開発、藻類研究施設への出向、サイバーダイン代理店など。ビジネスの視点からも、今後も十分可能性があると思っています。

Q:資源高・エネルギー高への対応は?
A:当社はエネルギー供給が事業の中心ですから、エネルギー高は本当に大きな影響を受けます。価格が上昇しないよう、会社として可能な限りお客様への提供には努力しているのですが、直接輸入しているわけではなく、価格に関してはどうしても限界がありますね。
介護事業(楽フィット筑西リハビリルーム)

Q:今後の事業展開の方向はいかがでしょう?また技術面でのニーズは?
A:地域のエネルギー、ビジネスソリューション、カーライフ、ホームライフをベースにすることには変わりありません。その中で、お客様により喜んでいただける事業を考えていきたい。お客様のご希望を早く察知して対応する、ということでしょうか。現在、介護事業に乗り出していますし、北浦で3社共同によるメガソーラー事業を始めています。
 技術面では、水素エネルギーの効率的な輸送技術や、メタンハイドレートなど次世代エネルギーの実用化技術が進展することを期待しています。
 それと、江崎賞をサポートさせてもらっているので、ナノテク関連の商品を取り扱えれば、という思いがありますね。

Q:一般論として、研究交流のあり方についてコメントをいただきたいのですが。
A:産官学の交流は、つくばが見本となりリードすべきと思います。お互いの専門分野を相手側が理解しやすいように伝える工夫が大切、と思いますね。

Q:あらためてつくばへの期待、要望がありましたら、あるいは、つくばに欠けているものに何かお気づきでしたら?
A:交流するとき、あるいは何かかかわろうとするとき、やはり分かりやすい説明が必要だと思いますね。

Q:ところで、江崎賞ご支援は本当にありがたく思っています。どういうご縁でご支援いただくことになったのでしょうか?
A:江崎先生という素晴らしい先生が、ずっとつくばにお住まいになっておられる。これになにか感謝の意を表したいということで、茨城県と相談させていただき、江崎先生のお名前を冠した賞を創設させていただきました。先ほども出ていましたが、私どもは地域貢献を非常に大切なことに思っています。その一環で、ということです。

Q:確かに、ホームページでも地元貢献の姿勢を強くアピールされていますよね。多くの質問に丁寧にお答えいただき、有難うございます。よい勉強になりました。これからも、賛助会員としてSATをご支援いただくよう、また江崎賞をご支援いただくようお願いいたします。
A:こちらこそ、これからもよろしくお願いします。


(感想)
 今回の訪問では24項目の質問を用意していきましたが、岡本総務部長には、それぞれ丁寧にお答えいただきました。事業内容として、中心分野を決めて地道に着実に進む、新しい展開はそのベースの上に構築していく、という姿勢を保っておられるようで、安定感のある企業だな、というように思いました。また、つくばにおける研究開発には強い期待を持っておられるようで、同社と研究者との密な交流の場の設定がSATとして必要である、と改めて確認させていただきました。
 製造業の会社ではありませんので、正直なところ、インタビューの展開を心配したのですが、お話を聞いていると面白いと思われることは沢山あり、たとえばガス事業でみると、販売だけでなく、設置事業やメンテナンス、さらには住宅関連へと事業が広がっていくとのこと、こういうものはやはり実業の世界、商社の世界という感じで、私には面白く思われました。
 ところで、つくば本社内では、3,4人の社員の方とすれ違ったのですが、皆さん非常に丁寧に挨拶していただき恐縮してしまいました。こういう社員の皆さんにこの会社は支えられているなと、あらためて感じ入ったようなしだいです。
(溝口記)

(参考)
関彰商事株式会社 ホームページ
http://www.sekisho.co.jp/


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