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第38回:株式会社 常陽銀行
 (株)常陽銀行は地方銀行64行の中で資金量が全国第5位という大手、有難いことに同行には、つくばサイエンス・アカデミー(SAT)設立当初から賛助会員としてずっとご支援いただいています。
 地方銀行として当たり前なのでしょうが、同行は地域振興・地域貢献を非常に大切にしておられ、東日本大震災後の復興にも「常陽地域復興プロジェクト『絆』」を立ち上げて、強力に取り組んでこられました。
 また今年の4月からは、『絆』プロジェクトを衣替えし新たに「未来協創プロジェクト『PLUS+』」を立ち上げ、地域振興・地域貢献に一層熱が入っているように見受けられます。協創というからには、力を合わせて何か新しいものを創り出そうとしておられるに違いありません。その時、つくばの知財・研究成果は一つの柱として重要な役割を果たすのではないでしょうか?
 平成26年8月29日、水戸の同行本店を訪問させていただきました(SAT渋尾事務局長、溝口)。ご対応は地域協創部池田担当部長、関次長、白石調査役のお三方です。
 はじめに、SATについて少し広報させていただき、インタビューに入りました。

Q:御社は地域振興・地域貢献を強く打ち出しておられ、特に最近は「未来協創プロジェクト『PLUS +』」で、震災からの復興、その先の成長に向けた支援に一層強く取り組んでおられるように聞いています。本日は、この「未来協創プロジェクト『PLUS+ 』」での具体的な取組みを中心にお話を伺い、その中でつくばへの期待についてもお聞かせいただきたいと思います。
A:東日本大震災から3年半が過ぎますが、茨城県も大変大きな被害を受けました。当行では、震災直後の6月に『絆』プロジェクトを立ち上げ、その中で3つの柱を立て、全行を挙げて復旧・復興を支援してまいりました。まず第一の柱である「円滑な金融機能の提供に向けた取組み」では、被災した取引先企業様向けに総額4000憶円の資金支援をさせていただきました。次に「地域経済の復興・活性化に向けた取組み」では、地域の企業、特に食関連事業者様の販路拡大・販売促進支援を強化しました。またものづくり企業様向けの支援では10年先の競争力強化・新たな企業価値の創出を支援するnext](ネクストテン)活動を展開し、主に大手企業とのビジネスマッチングや大学・研究機関との産学官金連携支援を強化しました。また新事業創出支援にも力をいれ、地域に潜在する革新的・創造的な事業プランを表彰し、その先の事業化を支援する「常陽ビジネスアワード」の取組みを新たに開始しました。三つ目の「地域貢献に向けた取組み」では、被災した観光施設の復旧のための資金の拠出(寄付金)や観光振興に向けた支援としてフォトコンテストなどを開催しました。また多くの行員がボランテイアとして被災地を訪問し、復旧支援のお手伝いをさせていただきました。

Q:広くまた密度の高い支援を継続しておられるようで、感銘を受けました。これまでの取り組みの中で、特徴的な取組みと言いますと?
A:風評被害の払拭を目的に開催した一般消費者向けの販売イベントである「がんばっぺ福島・茨城100円試食店」が特に特徴的な取組みとして挙げられます。これまでに東京日本橋や偕楽園の田鶴鳴梅林公園、さらには群馬銀行と連携し、群馬県高崎市でも開催させていただきました。他の金融機関でもバイヤーとサプライヤーの事業者間を繋ぐビジネスマッチングイベントは開催していますが、様々な地域の一般消費者向けに開催する販売促進イベントは当行ならではの取組みです。少なからず風評被害の払拭にお役に立てたのではないかと思っております。
常陽銀行ホームページより

Q:大切な取り組みと思います。そういうことを合わせ、これまでの震災復興支援の取り組みを、客観的にどのように見ておられますか?
A:これらの取組みは外部からも高い評価を受けております。先ほどご説明した「100円試食店」の取組みは、農林水産省が主催する「フード・アクション・ニッポン アワード2012」において、特に震災復興に寄与する取組みとして高く評価され、金融機関では初めての受賞となる「食べて応援しよう!賞」を受賞しました。また翌年の「フード・アクション・ニッポン アワード2013」においても、事業者間のビジネスマッチングイベントである「食の商談会」が、国内の食料自給率向上に寄与する取組みとして高く評価され、2年連続の受賞となりますが「審査委員特別賞」を受賞させていただきました。またものづくり企業支援では、これまでブース展示による商談が中心であった「ものづくり企業フォーラム」を、より商談成約率を上げるための工夫を凝らし、この『絆』プロジェクト期間中に技術提案型商談会という全く新しい商談スタイルを確立しました。具体的には、ものづくり企業の一押しの技術や商品を一冊の技術提案書に取り纏め、事前に大手セットメーカーに見ていただき、フォーラム当日に予約商談をセッティングすることにより、より精度の高い商談を実現しました。大手セットメーカーからは、「商談のはずれがなくなった」と高い評価を得ております。

Q:震災からの復興が大きなきっかけではありましょうが、「未来協創プロジェクト『PLUS+』」を開始した理由には、グローバル化など、最近の社会構造の変化も影響しているように思います。
A:そうですね。復興、更にはその先の成長を支援していく上では、今後の人口減少や高齢化などの社会構造変化を踏まえた、より高度な施策の展開が求められていると思います。『絆』プロジェクトで得た様々なノウハウを更に進化させていきたいと考えております。

Q:そうすると本プロジェクトでは、復興以外にどのような取組みを行っておられるのでしょうか?
A:たとえば、空き家対策では、全国の金融機関で初めて、移住・住みかえ支援機構と連携し、一括借り上げ型の「リバースモゲージローン」の取り扱いを開始しました。高齢者のニーズで説明しますと、「高齢者が住居を移住・住みかえ機構に賃貸し、その賃貸料を返済資源に銀行からお金を借りて、サービス付き高齢者用住宅に入居する」といった場合に活用できるものです。空き家を有効に活用して必要な資金を調達することが可能となります。

Q:他地域からの移住者を迎えるということでもありますし、良い年齢になった私どもには身近なお話で、ぜひうまく進めていただきたいと思います。ところで、私は「協創」という語は非常に良い語であるように思います。これはいつごろから使っておられるのでしょうか?
A:「協創」という言葉を当行の経営理念に掲げてから約15年になります。

Q:話題が変わりますが、起業支援・新技術開発支援に対してはどのような取組みを行っておられるのでしょうか?
A:これまでもファイナンスをはじめ、産学官金連携事業を強化するなど、起業支援・技術開発支援に取組んでおります。直近では、平成24年度から地域に潜在する革新的・創造的なビジネスプランを表彰し、事業化を後押しすることを目的に「常陽ビジネスアワード」の取組みを開始しました。人口減少や高齢化が進む中、地域の雇用創出、或いは地域の活性化に向けて、事業プランの作成支援から、表彰金の贈呈、更には事業化に向けた資金支援、その後の成長を後押しする産学官金連携支援、ビジネスマッチングなど、企業のライフサイクルを一貫して支援しております。ちなみに、産総研発のベンチャー企業も多数表彰させていただいております。
常陽銀行ホームページより

Q:ビジネスマッチングにおける具体的な事例をご紹介いただきたいと思いますが。
A:これは多数あります。たとえば、関西圏に本社工場を有する大手発注企業の調達担当者と、当行で作成している技術提案書の掲載企業の工場を一週間かけて訪問させていただくような取り組みをしております。このような取り組みは、先進的な事例として関東経済産業局のホームページなどにも取り上げられております。私どもとしては、地域内外でのやり取りを増やしたいと思っています。為替、カントリーリスクなどの外部環境の変化により、大手メーカーの国内回帰が一部で見受けられます。物流網が整っている現在では、コストや品質などの条件を満たせば、国内のどの場所で生産していても既存のサプライチェーンに食い込むことは可能です。そうすると日本国内での国際化といいますか、いばらき圏域の企業にとっては、チャンスとも捉えられます。そのチャンスを創出する取り組みを積極的に行っております。

Q:話が具体的になりますが、たとえば最近、ショーケースでホログラムレンズといって、ある形をレーザーで瞬間処理するという技術が発表されました。これは医療技術に使えないかということで議論が進んでいます。こういう例は、私の目から見ると、つくばではずいぶん沢山あるように思います。なにか、応援することを考えていただきたいと思うのですが。
A:今のお話は、よく存じ上げています。この技術をお持ちの一般社団法人様には昨年11月の「常陽ものづくり企業フォーラム」にご参加いただき、技術提案書も作成していただきました。こうしたフォーラムを通して、或いは個別にも様々な事業領域の大手企業とのビジネスマッチングに取組んでおります。

Q:いろいろよく見てくださっているのですね。勉強不足で申し訳ありません。ところで、銀行から見た茨城の魅力・特徴といいますと?
A:茨城は他県に比べ平坦な土地が多く、圏央道や北関東自動車、或いはつくばエクスプレス、更にはひたちなか港や茨城空港など、交通インフラが急速に整備されるなど、物流だけをとっても他を圧倒していると思います。昨年の企業立地件数全国1位がそれを物語っているのでないでしょうか。
インタビューが終わって一息、左より白石調査役、池田部長、関次長、溝口

Q:特につくばの魅力については?
A:都心から近いこと、また国の研究機関の3分の2が集積するなど、非常に魅力のある都市だと思います。特に国の研究機関と中小企業のマッチングを進めていきたいと思っています。ですが、中小企業から見ると研究機関が少し遠い気がします。手弁当になってしまうかもしれませんが、中小企業とも積極的にディスカッションしてほしいと思っています。そこから思いがけない次の研究テーマが見つかるかもしれません。既に産総研さんや物材機構さんにはいろいろとご協力をいただいておりますし、今後、食総研さんや高エネ研さんともリレーションを深めていきたいと考えております。

Q:ずいぶん時間がたってしまいました。最後にSATへの期待についてお話しいただきたいのですが?
A:つくばには数多くの研究機関がありますから、研究機関間、或いは研究者間の連携を促す、横串をさす役割を期待しております。縦割りの障壁を無くし、研究機関間・研究者間の連携が進めば、今までにないもっとすばらしい研究成果が出てくるのでないかと期待しております。ベンチャーを立ち上げるときには、当行も是非お役にたちたいと思っています。

Q:長時間、有難うございました。今後も賛助会員として、ご支援お願いいたします。
A:こちらこそよろしくお願いいたします。


(感想)
 いろいろお伺いしたのですが、常陽銀行では、こちらが知らないばかりで、震災からの復興に非常に熱心に取り組んでおられ、すでに4000億円の資金支援をはじめ、地元貢献の立場から事業支援・技術開発支援も積極的に展開しておられます。つくば関連では、たとえば産総研発のベンチャーの支援があるとのことです。こういった具体的な取り組みについては、事前の勉強不足で踏み込んでお聞きすることができず申し訳ないことをいたしました。
 今日はグローバル化が進んで、学術面でも具体的な技術でも、世界的な競争の枠組みに入ってきています。そのような流れから考えると、研究者は、もっと具体的に社会に役立つあるいは地元に役立つという姿勢を取るべき状況になってきているように思います。その場合、今まであまり直接的な交流はなかったのですが、金融機関との連携も視野に入れるべきでありましょう。逆に金融機関側からも、気楽にシーズ探しに取り組んでいただきたい、そのように思います。そして両者の接近の可能性は、今日のお話ではずいぶん高まってきているように思われました。
(溝口記)

(参考)
常陽銀行 URL
http://www.joyobank.co.jp/kabunushi/corporate/index.html


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