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第43回:(株)常陽産業研究所
 (株)常陽産業研究所(JIR)には平成27年の夏につくばサイエンス・アカデミー(SAT)賛助会員になって頂きました。
 JIRの情報誌 常陽産研NEWS(JIR NEWS)の記事の一つであるThink×Actの執筆者推薦をSATの溝口前コーディネータの時代から行っていて、この4月から私が引き継いだことで、私とJIRとのお付き合いが始まりました。Think×Actとは県内の大学や研究機関の研究者に、研究成果を事業化の視点で紹介して頂くコーナーです。執筆者推薦を通して、JIR NEWS発行責任者である櫻井様との会話の中で、SAT賛助会員入会について案内し、その後、快く入会頂いたという次第です。
(写真1) (株)常陽産業研究所が入っている常陽郷土会館
 JIRを訪問した日(12月15日)は暖冬の恩恵をうけた一日でした。旧県庁のすぐ近くの三の丸に建つ常陽郷土会館にあるJIR(写真1)に入り、すぐ目についたのが彫刻でした。4年前に99歳で亡くなられた佐藤忠良先生の作品で帽子をかぶった若い女性です。このモデルになった女性(佐藤忠良先生の一番弟子の女流彫刻家で長くモデルも務めた)は私の中学時代のクラスメートである女性です。芸術を大切にするこころを嬉しく感じました。
 インタビューに対応頂きましたのは鈴木祥順取締役社長、櫻井博明総務部長兼研修事業部長のお二人です。SATからは渋尾篤事務局長と伊ヶ崎文和です。
 JIRは、常陽銀行グループにより平成7年に設立された地域型シンクタンクで、平成27年4月で20周年を迎えたとのことでした。「地域と企業の繁栄を目指し、皆様と共に考え、共に歩む」ことが経営理念であり、経営理念実現のために地域研究部、経営コンサルティング部、研修事業部およびファンド事業部が置かれています。茨城県を中心とした関東圏に多くの賛助会員を有して、地域と賛助会員の繁栄のために各種事業を実施しています。SAT賛助会員にも有益な情報・事業が提供されていると思いました。前述の通り、JIRとSATとは機関誌「JIR NEWS」のThink×Actを通じた関係があり、機関誌づくりのご苦労やSATへの要望などに関しても率直な意見交換が出来たと思います。SATの活動にも早速参加頂いていますので、参加しての感想やSATへの要望などもお聞きしました。今後は、研究成果の事業化・製品化の支援や人材育成の面において、JIRとSATとはより連携を深めて行くことが望ましいのではないかとインタビューを通して感じました。

 以下、インタビューの概要です。なお、JIR、SAT共に賛助会員がいますので、JIR賛助会員、SAT賛助会員という表現を用いました。

Q:設立時期および設立の経緯などについてお願いします。
A:設立は平成7年4月です。地域型シンクタンクとして、常陽銀行グループにより設立されました。平成27年4月で設立20年が経過したところです。

Q:御社の理念をお聞かせください。
A:常陽銀行が掲げる経営理念「健全、協創、地域と共に」のもと、「地域と企業の繁栄を目指し、皆様と共に考え、共に歩みます。」を当社の経営理念としています。

Q: JIRは賛助会員制をとっています。JIR賛助会員企業は関東地域が主ということですが、概要をお願いできますか。
A:当社の賛助会員は、会員である前に常陽銀行本支店のお取引先であるということが前提となっています。従いまして、常陽銀行の本支店所在地である8都府県に跨ってJIR賛助会員企業様も分布しています。本支店の大半が茨城・福島・栃木・千葉・埼玉各県にありますので、JIR賛助会員企業様の所在地も同様となっています。

Q:茨城県が中心だと思いますが、JIR賛助会員企業は中小企業が主ですね。
A:茨城県の企業が7割以上です。賛助会員様は中小企業が多いです。

Q:地域に貢献するシンクタンクとして平成7年に設立された経緯をもう少し説明頂けますか。例えば、茨城県の社会・経済状況と関連した特別な理由があるとかいったことですが。
A:平成7年は常陽銀行創立60周年に当たり、記念事業の一環として当社が設立されました。常陽銀行グループには、他に昭和44年に設立された(一財)常陽地域研究センターがありまして、こちらは地域経済のリサーチ等を中心にシンクタンク機能を果たしています。同センターが地域を面的に捉えた調査活動を行っているのに対して、当社は地域内の個々の企業を対象としてコンサルティング活動を展開しています。
(図1) (株)常陽産業研究所の社内体制

Q:地域型シンクタンクとしての事業内容をお教えください。
A:企業、地方公共団体などへのコンサルティング業務、研修・人材育成支援、調査研究の受託、経営情報の提供などです。

Q:事業内容に対応して、経営コンサルティング部、研修事業部、地域研究部、ファンド事業部があるのですね。
A:その通りです(図1)。従業員数は27人です。

Q:SATの賛助会員は現在62社であり、製薬、化学、材料、食品、電気・電子、半導体、機械関連の企業および研究所が半数くらいで約30社、その他、試薬・科学機器等の商社、国立研究開発法人、銀行、財団法人などです。これらSAT賛助会員に役立つと思われる御社の事業内容を紹介頂ければと思います。事業部(事業内容)毎にお願いします。
A:まず、経営コンサルティング部は、SAT賛助会員様が会社であることに着目し、経営現状分析や事業構造変革のお手伝いをすることができます。また、人事制度設計や退職金制度改革などについても支援できるものと思います。さらに、ISO等規格取得の支援を行うこともできます。

Q:ISOの取得は海外との貿易などで実質的な影響があると思いますが、主として対象とされているJIR賛助会員の海外依存度はどの程度でしょうか。
A:海外依存度に関する正確な数字は把握していませんが、主に製造業、農業などを中心に海外と一定の取引があります。

Q:ISO関連規格取得支援のニーズはかなりあるということでしょうか。
A:取引先から求められているという事情もあります。かつては品質管理(ISO9001)、環境管理(ISO14001)が主でしたが、現状では航空機関係、自動車、情報などの規格取得もしていく必要があります。農業関係では国内規格ですが、JGAP(農業生産工程管理)取得のニーズもあります(表1)。
(表1) ISO等支援コンサルティング

Q:研修事業部に関しましては如何でしょう。
A:研修事業部は、サービス対象がJIR賛助会員になっているSAT賛助会員様向けに限定されてしまいますが、インターネット情報サービス「常陽ビレッジ」を通じて各種経営情報を提供することができます。さらに、職員様向け研修セミナーの開催や研究会・勉強会等への講師派遣を通じて、人材育成のお手伝いをさせていただくことができます。

Q:研修等を通しての人材育成のニーズも高いのですね。
A:新人研修、中堅社員を対象の研修あるいは経営者対象の講演会なども開催しています。

Q:研修などの開催回数はどの程度でしょうか。
A:平成27年度は、講演会・実務セミナーの開催が30回ありまして、それとは別に新入社員研修が14回あります。

Q:大変な開催回数ですね。
A:それだけのニーズがあります。

Q:地域研究部は如何でしょうか。
A:地域研究部は、クライアントの中心が地方公共団体でありますので、SAT賛助会員様と直接関わる機会はそれほどないとは思いますが、地方創生、工業・商業振興等の分野におきまして、官民連携の橋渡しや各種イベントのお手伝いなど間接的な支援が可能です。

Q:地方創生が叫ばれていますが、地域研究部も関係していますか。
A:今年は地方創生元年と言われています。地方自治体には人口ビジョンおよび地方版総合戦略策定が求められています。地域研究部が主体となって、常陽銀行・常陽地域研究センターと連携し、グループ全体として策定支援を行っています。

Q:官民連携の橋渡しという話がありました。具体例がありましたら、お聞かせください。
A:先週つくば市で開催したビジネスマッチング事業「ものづくり企業フォーラム」が直近の具体例です。さらに来年2月開催予定の「食の商談会」、これは単に銀行グループ単独というよりも、茨城県、関東経済産業局の後援を頂きながら、筑波大学、茨城大学などと連携して行う産官学金連携事業です。SAT賛助会員様にもこのようなビジネスマッチング事業のご案内などが可能かと思います。

Q:平成27年10月に新設されましたファンド事業部についてお願いします。
A:新設(H27.10.1付)のファンド事業部は、6次産業化ファンドや新産業創出ファンドの出資先の検討を行っていますので、SAT賛助会員様の中でこのような分野で新規に事業を立ち上げる際のお手伝いをすることが可能です。

Q:6次産業化について、農業生産額が全国第2の茨城県では取り組みは如何でしょうか。
A:「常陽大地と海の成長ファンド」という事業を行っています。投資案件第1号、第2号は既に決まっています。また、茨城県内では行方市の廃校を利用して、焼き芋のテーマパークにしようという事業が展開されています。こうしてみると、6次産業化も徐々に盛り上がりを見せていると言えるのではないかと思います。新産業創出ファンドは、IPOを目指すベンチャー企業向けのファンドです。
(図2) JIRNEWS(2015年11月号)

Q:法人向けのインターネットサービス「常陽ビレッジ」について、紹介ください。
A:「常陽ビレッジ」は、MURC(三菱UFJリサーチアンドコンサルティング梶jが構築したインターネットサービスを当社仕様にカスタマイズしたものですが、地銀系コンサル10数社が参加・利用しています。情報、相談、商談、調査、交流、常陽、インターネットセミナー、デジタル法令&文例の8つのカテゴリーで構成され、経営全般 にわたる様々かつ有用な情報を提供しており、JIR賛助会員企業様から好評を得ています。

Q:JIR NEWS(図2)についてお聞きします。創刊はいつでしょうか。私も年2回発行のSAT会誌編集をしていますが、JIR NEWSの場合、月刊誌ですので、ご苦労もあろうかと思いますが。
A:創刊は1995年7月です。最たる苦労は、やはり「期限を守る」ことです。毎月1日が発行日となっているため、取材・原稿おこし・校正・編集・印刷・発送を定められた期限にまで行わねばなりません。所管している研修事業部担当者にはかなりのプレッシャーとなっています。

Q:JIR NEWSの御社での位置づけはどのようなものでしょうか。
A:賛助会員向けサービスの根幹をなしているという位置づけです。会員様同士のつながりを強めていくことを重視しており、最初の記事を必ずトップインタビューにしています。

Q:JIR NEWS発行に関し、気を付けていることはどのようなことでしょうか。
A:読者の大半がJIR賛助会員企業様のオーナーであるということです。オーナーは50代〜70代の方が多く、この年代の方々に興味を持って頂けるよう、記事の内容やデザイン・字体に至るまで細かな工夫を凝らしています。

Q:読者層に合った記事を提供するということですね。デザイン・字体などでの工夫の具体例をお教えください。カラーは必須ですか。
A:文字のポイントを重視しています。また見出し毎に色を変えるとか。写真、図表を挿入したり、読んでいて飽きさせないように、読みやすい工夫をしたりしています。内容的には堅い記事ばかりではなく、「園芸で四季を楽しく」「メンタルヘルスチェック」など柔らかい記事も入れるようにしています。
SAT:どの頁を開けてもカラフルで、写真、図表なども適度にあり、読みやすくという工夫が感じられますね。

Q:記事の一つであるThink×Act(図3)についてお聞きします。Think×Actは「県内の大学や研究機関の新進気鋭の研究者の研究成果を事業者化の視点で紹介し、製品開発や改良のヒントにして頂くとともに産官学連携の一助となれば」というねらいです。始まったのはいつからでしょうか。また、そのきっかけは?
A:Think×Actは平成25年7月から連載しています。産官学連携の機運が高まっているなか、「当社でも何かお手伝いできることはないか」と社員に問いかけ、社員の自発的な発想から当企画が生まれたものです。
(図3) Think×Actの記事

Q:始まって3年経ちましたが、読者の反応は如何でしょうか?
A:読者である賛助会員企業様のうち、特に製造業、加工・組立業、農業等に関わる会員企業様には好評のようです。企画当初、掲載する研究成果と賛助会員企業様のニーズとのビジネスマッチングに繋げたいとの思いがありましたが、残念ながら今のところ、成約には至っていません。今後も成約に繋げられるよう活動したいと思います。
SAT:研究成果の事業化・製品化の支援もSATの目的の一つですので、企業様のニーズに応えられるように執筆者推薦にも力を入れていきたいと思います。

Q:JIRのHPを見ますと、JIR NEWSがアップされていますが、残念ながらThink×Actの内容を見ることができません。可能なら見ることができるようにできないのでしょうか。
A:平成28年度前半までにHP改定作業を行う予定です。新HPでは、Think×Actもご覧いただけるようにしたいと思います。
SAT:嬉しい改定ですね。楽しみにしています。

Q:Think×Actの記事を読んで、興味を持たれた場合にすぐに執筆者に連絡が可能なように、執筆者の連絡先を掲載して頂くことはできないのでしょうか。できない場合にはJIRの連絡先をどこかに入れて頂くとか。
A:公開情報であれば、執筆者のメールアドレスなどを付記できるのではないかと思います。執筆者のご了解を得て、付記できるよう検討したいと思います。
SAT:宜しくお願い致します(平成28年年2月号のThink×Actでは連絡先の記載がされる予定です)。

Q:Think×Actについて、こちらからの要望ばかりでしたが、執筆者推薦についてJIRからの要望がありましたら。
A:国立研究開発法人、大学、民間研究所と様々な機関から様々な分野の研究者を推薦して頂き、とても感謝しています。今後も幅広い分野の研究者をご推薦ください。
 今は農研機構の研究者に数回連続して執筆頂いています。Think×Actが始まったときはしばらく産総研の研究者が続きました。数回は同じ分野の方が続いた方が読者の方が興味を持って頂けるようです。また、産総研関係のベンチャー等、視点を変えた内容をお願いできればと思います。
SAT:ご要望に応えるように努力していきたいと思います。
鈴木祥順取締役社長(右)と櫻井総務部長兼研修事業部長(左)

Q:これからは、SATとの関連についてのインタビューです。今年度賛助会員になって頂きまして感謝申し上げます。早速11月9日の賛助会員交流会に参加頂きましたが、感想を頂ければと思います。
A:賛助会員交流会に初めて参加させて頂きました。賛助会員様の事業紹介された内容は素晴らしいものと感じました。また研究者の成果の紹介も良かったですね。専門的な内容は難しい点もありましたが、発表内容の重要性などをわかる形で話をして頂いたかなと思います。シンクタンクを標榜している我々としましても、さまざまな情報・知識を絶えず吸収していく必要があると思いますので、このような機会を捉えまして勉強させて頂き、我々の活動の中に取り入れていきたいと思っています。今後も、皆様と交流させて頂きたいと思います。
SAT:異分野、異業種間でお互いに理解し合う努力の中で新しいものが生まれてくるのでしょうね。

Q:SATの目的は、大学、国立研究開発法人、企業の研究所などが集積したつくばの地で組織の壁や専門分野間の壁を越えた異分野交流による研究者個人の「知の触発」によって、先駆的な研究領域の創造、研究成果の製品化・事業化、若手人材の育成などに貢献することです。設立して15年を迎えたところです。JIRの立場から、SAT活動への要望などあればお聞かせください。
A:まだ会員になってから日も浅いので、要望と言いましても言いにくいのですが、一つ言わせて頂ければ、例えば賛助会員交流会等も可能なら回数増を考えて頂ければと思います。当社のように地域に根差したコンサルティング会社にとりまして、「つくば」をキーワードに産官学金の強い連携が図られることはとてもありがたいことです。SATは、その仲介機能を果たしており、「つくば」地域になくてはならない存在です。今後もこれまでの活動を一層深化させて頂きたいと思います。

SAT:貴重なご意見ありがとうございました。今年度は私が4月からコーディネータを仰せつかったものですから、賛助会員交流会等も年度の後半になってしまいました。今後は回数に関しましても考えてみたいと思います。平成28年2月にはSAT賛助会員交流会にも参加頂けることになっています。今後ともどうか宜しくお願い致します。
本日は、どうもありがとうございました。


(株)常陽産業研究所のHP: http://www.jir-web.co.jp/



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