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第44回:株式会社 Scientific Language
 G7科学技術大臣会合がつくば国際会議場で5月15日〜17日まで開催され、その興奮が冷めやらぬ5月18日、文字通り五月晴れの日の午後、賛助会員である(株)Scientific Language社を訪問しました。と言いましても国際会議場とは目と鼻の先の距離にあります。(株)Scientific Languageは科学技術分野の文献などの翻訳や国際会議などの通訳派遣などを業務としている会社です。(株)Scientific Language社に入ってすぐ、今年7月7日開催のSATフォーラム「山中伸弥講演会」のポスターが目に入りました。対応いただきましたのは代表取締役の高岡和彦様、SATからはコーディネータの伊ケ崎が伺いました。名刺交換をした後、高岡様が「いかざき」様と読むのですかという会話から話は始まりました。私が山口県徳山市(現在は平成の大合併で「周南市」となっています)出身であること、徳山には学年に2,3名は同じ名字の生徒がいたこと、またローマ字で表記するとIKAZAKIとなり、回文であることも説明しました。こんな話からスタートしましたので、リラックスした雰囲気でのインタビューとなりました。以下、インタビューの概要です。
(写真1) (株)Scientific Language社が入居する KAISHO III ビル

質問:設立はいつでしょうか。また、つくばに設立された理由などお伺いします。
回答:2007年9月に前身の会社から分社・独立して株式会社Scientific Languageを設立しました。前身の会社が「つくばにある研究機関」をターゲットにつくばで翻訳サービスを始め、そこから独立する時に顧客も社員もすべて引き継いだこと、また当社がターゲットとする「学術・研究・開発」に関係する顧客層には「つくば」がブランドとして確立しているというメリットがあり、そのままつくばで業務を行っています。

質問:業務内容についてお聞かせください。
回答:「翻訳、通訳、英文校閲、テープ起こし」の4つのサービスを柱としています。会社ホームページやパンフレットに『「ことば」に関するトータルサービス』と掲げているのは、お客様のニーズの中に「翻訳、通訳、英文校閲、テープ起こし」の範囲で対応できなくても、弊社のリソースを使って対応できることがあればぜひ取り組んでいきたい、という思いがあるからです。そのことによって、お客様にご満足いただけるし、弊社も成長できると考えています。

質問:つくば、茨城には同業者が多いのでしょうね。
回答:「翻訳、通訳、英文校閲、テープ起こし」の4つのサービスを提供している同業者はいらっしゃいません。「翻訳と英文校閲」や「テープ起こしのみ」を行っているという業者はいらっしゃいますが。

質問:業務に関し、モットーはどのようなものでしょうか。
回答:まずお客様のご希望を理解すること。そのご希望に応え、お客様にご満足いただけるために弊社でできることは何かを考え提案すること。またその提案は、お客様−弊社−実作業を担当するワーカ(翻訳者、通訳者など)の3者がWin-Win-Winとなっていることです。

質問:お客様はリピータがやはり多いのでしょうね。
回答:そうです。およそ7割の方がリピータです。

質問:4つのサービスを行っているということは強みにはなりますね。
HPを見ました。「お客様の声」にはたくさんのお客様の感謝・お礼の言葉が掲載されています。それらのお客様がリピータになっていくということが重要ですね。
回答:その通りです。この感謝・お礼の言葉をいただくことは社員にとりましてはとても嬉しいことです。
(図1) パンフレット

質問:ことばに関連することであれば、お客様の相談にのり、お手伝いしていきたいという思いを掲げているわけですが、設立当初から研究開発・技術開発のインフラは変化していると思います。お客様のニーズにはやはり変化があるのでしょうか?
回答:ニーズの変化はあります。以前は「英語ができないから翻訳を、通訳をお願いしたい。」ということでしたが、現在は「英語は出来るのだが、時間が取れないから、翻訳をお願いしたい。専門家だけなら通訳の必要はないのだが、一般の方も参加して頂き、協力を得たいので通訳をお願いしたい。」という感じです。すなわち、現在は、英語は出来るのだが、お願いしたいということですので、要求レベルが高くなっていると言えます。英語ができる方が格段に増えてきていますので、翻訳や通訳の品質に対するお客様の期待値は高くなっています。その期待に応えられるよう、常に改善を意識して案件にあたっています。

質問:かっての経験では国際会議の場合、通訳がつくことがありました。正直イライラしたことが多かったです。難しいなと思いました。
回答:通訳者が、研究者に比べてその分野の内容をよりよく理解しているということはありません。ですので、会議で使用される資料を事前にご提供頂いたり、研究者との打ち合わせ時間を頂いたりといった事前準備がとても重要です。

質問:仕事の受注は地域的にはつくば、茨城が多いのでしょうね。
回答:実は多くの受注は東京からです。茨城・つくばからは全体の10%程度です。
SAT:それは意外ですね。
回答:特に通訳が、国際会議などは圧倒的に東京開催が多く、お客様が東京に集中しています。翻訳、英文校閲、テープ起こしは、茨城・つくばのお客様にご贔屓にして頂いているとは思いますが、お陰様で全国からご依頼を頂いています。

質問:業務に関しまして、紹介ください。また貴社の他社と比較しての強みなどをお聞かせください。
回答:いずれの業務も、作業は第一線で活躍しているフリーランスのワーカ(翻訳者、通訳者など)が対応します。社内のリソースで対応するのではなくフリーランスのワーカに依頼することで、幅広い専門分野に安定して対応できる体勢を整えています。
 また各ワーカの特徴を出来る限り深く知るよう努めており、例えば「○○分野の知識がある」という情報だけでなく、そのワーカの特徴を踏まえた上でそれに合った業務を依頼するよう心がけています。

質問:つくばは実作業を担当するワーカが多く在住していると思います。分野的にどの分野のワーカが多いのでしょうか。逆に少ない分野は?
回答:実は、つくば在住の方はあまりいません。翻訳、テープ起こしはインターネット環境があればお住まいは関係ないので、全国各地、あるいは海外在住の方にご登録いただいています。英文校閲はサービスの性質上、UK、アメリカ、オーストラリアなど英語を母国語とする国在住の方がほとんどです。通訳だけは、会議の現場に通訳者本人が出向かなければならないので、通訳業界として仕事量が圧倒的に多い東京在住の方が多数を占めます。
大枠の分野でのくくりで考えると、ワーカのかたよりはさほどありません。
SAT:それは意外でした。英文校閲は海外在住者が多いとは。さすがに現在はネットの時代ですね。
(写真2) インタビューに答える高岡代表取締役

質問:貴社で登録しているワーカさんをどのように組織化されたのでしょうか。
回答:弊社では前身の会社から一部は引き継ぎました。その後は弊社からこのHPにアクセスすればワーカさんを募集できるとかの情報を持っていますので、募集をかけたりしますし、弊社のHPでも募集するといったことで対応しています。

質問:業務から見ますと、高岡様も「ことば」に興味をお持ちかと思いますが、差支えない範囲で「ことば」との係わりをお聞かせください。
回答:これまで特段語学が好きという訳でもなく、また過去の職歴も「ことば」に関したものはありません。ただ前職で5年間海外駐在員(精密機器の欧州における販売法人の)として日本本社とベルギー法人の間に立って調整を行うという立場になったときに、物事を正確に伝えることの難しさや、同じ事柄でも伝え方によって受け取る側の対応がまったく違ってくる、ということを実感し、仕事をする上で、またもちろん自分の日常生活においても「ことば」の大切さを感じました。

質問:「伝え方によって受け取る側の対応がまったく違ってくる」ことは私の日常的な体験でもよく経験しています。「ことばのそういう意味での大切さの認識」が御社の仕事の基盤になっているのでしょうね。
回答:メールでのやり取りが中心になるので、こちらから送るメールの文面は受け取る人にとってわかりやすくかつ誤解の無いよう、こちらが受け取ったメールは行間も含めて理解するよう、全員で心掛けています。

質問:御社にはコーディネータという立場の方がいらっしゃるようですが、どのような内容の仕事を担当されているのでしょうか。
回答:お客様からご発注いただいた案件に対し、ワーカの手配や納品、工程管理など、お客様とワーカの間に立って調整を行います。

質問:社員が業務を行う中でのやりがいを感じるのは、どのような時でしょうか。
回答:お客様からお礼やお褒めの言葉をいただいたときですね。

質問:お客様の満足度の表れですからね。お客様とワーカとの間に立って、調整をした甲斐があったと感じる時ですね。
回答:学術分野の仕事ですから、仕事上で今まで知らなかった世界に触れるという知的好奇心を刺激されるということもやりがいを感じる時ですね。

質問:社員教育に関しましては如何でしょうか。
回答:入社時に会社の方針や、社員の皆さんに期待することを説明します。あとは業務を行いながら都度の説明になります。小さな会社ですので、定例的な研修会などは行っていません。必要や本人の希望に応じて、外部の研修会に参加してもらうことはあります。

質問:将来的な展開に関するお考えをお聞かせください。
回答:様々な自動翻訳や音声認識の技術が開発されていく中で、そういった技術と我々に現在登録いただいているワーカの持っている専門的なスキルをどのように組み合わせ、よりよいサービスを提供していくかを模索しています。

質問:確かに、人工知能(AI)が発展して、自動翻訳などは日々進歩していると思います。お客様のニーズがそれらの技術(人工知能)のみで満たされる時代が来るのでしょうか。
回答:それは、ぜひその道の専門家にお聞きいただければ。我々としては、その日がすぐきてしまうと困ります(笑)。しかし、現実に囲碁に関するAIのディープラーニングの成果を見ますと驚異としか言いようがないですね。ただ通訳などに関しましては、人それぞれの滑舌や文法構成などの違いがあることを考えると、汎用性という点でどうなのかなとも思います。条件を満たす場合には可能になるかとも思いますが。AIの発展には常に注目していく必要があると思います。

質問:自動翻訳などの技術が開発されても必ずワーカでなくては出来ないことがあると思っています。
回答:自動翻訳の成果にワーカとしての付加価値を如何に付けていくことが出来るかですね。少なくとも現状では、特に弊社が注力している「専門的な学術分野」における対応ではワーカの圧勝です(笑)。ただしすべてを人力で行っているので、相応の時間と費用がどうしても必要になりますので、誰もが気軽に使えるサービスでないことは否めません。会社経営のことを考えなければ、そういった技術が完成し普及したほうが、より多くの方にメリットがあるのかなと思います。
 将来的な展開に関する別の点ですが、お客様自身の語学力がどんどん上がってきているということに関する危機感といいますか、対応です。大手企業では採用条件が英語の出来る人で、英語で日常的に仕事をするようになっていますので、その分仕事は減少せざるを得ない。それへの対応です。
SAT:そこは同業者全体の問題ですね。それらの課題に対し、対応いただきながら、科学・技術分野の発展に側面的に貢献いただけますことを期待しています。
 SATからのお願いをしてインタビューを終わりにしたいと思います。

SAT:SATの事業は顕彰事業、異分野の研究者・技術者のポスター発表の場であるテクノロジーショーケース、世界的な研究者を招聘しての講演会であるSATフォーラム、SAT会員と市民の交流の場であるSATつくばスタイル交流会、賛助会員同士および賛助会員とつくば研究者の交流の場としての賛助会員交流会、異分野の研究者も含めての研究情報交換会など実施しています。是非参加いただければと思います。
 今後ともSAT事業への御支援をどうか宜しくお願い致します。
高岡様:こちらこそ、ありがとうございました。SATフォーラムには是非、我が社のパンフレットを置かしていただきたいということで、申し込みをしました。
SAT:賛助会員交流会などで、名刺交換などもしていただくことも出来ますので。
回答:機会がありましたら、考えてみたいと思います。


 (株)Scientific Languageの代表取締役高岡和彦様は賛助会員訪問前でのメールやりとりで、大変レスポンスが良い方でしたので、好印象を持って訪問しました。ことばを大切にされる方でした。「翻訳、通訳、英文校閲、テープ起こし」の4つを全て行う業者は茨城、つくばでは(株)Scientific Languageだけとのこと、社員10人の会社で、科学・技術分野の発展を支えている1法人と思いました。楽しいインタビューでした。文字にはしませんでしたが、私からベルギー、オランダの話、日本の捕虜となったオランダ人の話、高岡様の夢から発展して、孫の話などちょっと脱線してしまうほどでした。また、将来的な展開の話では、インタビューにありますように、AIの話題にも話が弾みました。今後いろいろな分野でAIの影響が出てきそうです。AIの成果に人間の付加価値をプラスする展開を期待したいと思い、社を後にしました。

(株)Scientific LanguageのHP: http://www.scientific-language.co.jp/



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