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2019年8月19日掲載
第15回研究情報交換会(10月1日(火))開催のご案内
テーマ「加熱しないで、ち密なセラミックス膜をつくる方法(AD法)」
             主催:つくばサイエンス・アカデミー(SAT)
             共催:先進コーティングアライアンス(ADCAL)

 つくばサイエンス・アカデミー(SAT)では研究テーマを決め、異分野交流による「知の触発」を意識した研究情報交換会を開催しています。研究情報交換会では、テーマに関連して複数の研究者に講演をお願いし、その後、異分野の参加者を含む方々との自由討論を行います。
 この度下記の要領で第15回研究情報交換会を開催します。会員、非会員に関わらず参加可能です。皆様の参加をお待ちします。
 なお、今回は開始時間が午後4時ですので、ご注意ください。

参加募集要領:
・参加募集人員 20名
・参加費・懇親会費は無料
・参加希望の方は、メールで申し込み先 academy@epochal.or.jp まで、
 「第15回研究情報交換会参加」と記載し、①氏名、②所属機関、部署、③専門分野、④連絡先(電話番号、e-mail)、⑤懇親会参加希望の有無を連絡ください。

                         記
1. 日時: 2019年10月1日(火) 研究情報交換会 午後4時から7時
                      懇親会 午後7時から8時15分

2. 場所: つくば国際会議場 4階 サロンレオ会議室

3. テーマ: 「加熱しないで、ち密なセラミックス膜をつくる方法(AD法)」
(趣旨) 加熱しないで、ち密なセラミックス膜をつくる方法はエアロゾル・デポジション法(AD法)を指す。AD法は微粒子をガスと混合、エアロゾルとし、ノズルを通して基板に衝突させることによってセラミックス膜を作製するものである。通常セラミックス膜は高温での熱処理を必要とするが、ある条件を満足した場合には、AD法によって基板などを加熱しなくても、ち密なセラミックス膜ができるので、常温衝撃固化法と呼ばれる。
 「セラミックス粒子が数μm以下の粒子径になると、粒子衝突による高圧負荷下で、常温で塑性的流動を起こし、それによる粒子表面の新生面の形成、活性化により粒子間結合が常温でも促進され、結果として常温でち密な透明性の高いセラミックス膜が得られる」というメカニズムが考えられている。
 研究情報交換会では、“摩擦空間に発生するマイクロプラズマ研究の立場”および“地球科学における脆性・塑性転移について研究している立場”からコメントをいただき、AD法のメカニズムについて意見交換を行うとともに、AD法のさらなる発展のために、今後何をすべきかについて考えていきたい。

4.プログラム:
・開会挨拶 【午後4時~4時 5分】
・講演 【午後4時 5分~5時20分:各講演(講演20分+質疑5分)】
  産総研 先進コーティング技術研究センター長 明渡 純氏
        「常温衝撃固化現象とセラミックスコーティングへの応用」
  メゾテクノロジー研究所 代表 中山景次氏 
        「トライボプラズマの発生機構と発生特性」
  産総研 活断層・火山研究部門 主任研究員 重松紀生氏
        「地球科学分野の脆性・塑性転移から見たAD法」(仮題)
・休憩  【午後5時20分~5時30分】
・フリーディスカッション  【午後5時30分~7時00分】
・閉会挨拶
・懇親会 【午後7時00分から8時15分】

5.講演者の講演概要
○産総研 先進コーティング技術研究センター 研究センター長 明渡 純氏
 「常温衝撃固化現象とセラミックスコーティングへの応用」
 概要)エアロゾルデポジション(AD)法やコールドスブレー(CS) 法などの純粋な衝突圧力や衝撃力を利用するコーティングプロセスが注目されている。微粒子や超微粒子を数百m/s以上に加速し、ピーム形状にして基板に衝突させ、純粋な機械エネルギーの供給だけで緻密で密着力の高い膜が形成できる。巨視的には金属やセラミックスの微粒子は、ほぽ固体状態のまま室温で結合していると考えられる。実際AD法では、室温で数十nm以下の微結晶構造を有する緻密で優れた電気機械特性のセラミック膜が常温形成でき、半導体製造装置の分野重要なコーティングプロセスとして事業化されている。これは原料粒子を溶融状態または半溶融状態にして結合する溶射技術や衝撃焼結とは原理が異なると考えられ、「常温衝撃固化現象(RTIC)」と呼ばれている。ここではRTIC現象を用いたADプロセスの堆積メカニズムと,将来のコーティング技術としての重要性について紹介する。

○メゾテクノロジー研究所 代表 中山景次氏
 「トライボプラズマの発生機構と発生特性」
 概要)トライボプラズマの発生機構と発生特性について、実験とシミュレーション理論の両面からのアプローチ結果を述べる。トライボプラズマは接触面の前方隙間、内部隙間、後方隙間に発生する。このプラズマは、これらの隙間内に発生した摩擦帯電による高電界により電子が加速され、この加速された電子が周囲気体分子へ衝突して電子なだれ現象を引き起こすことにより発生する非平衡低温プラズマである。材料種、気体種、気体圧力、幾何学形状、面圧、すべり速度などのプラズマ発生分布、発生強度などへの影響について紹介する。プラズマの温度分布や流れ特性、さらには応用技術についても触れる。常温衝撃固化法のメカニズム解明に参考になれば幸いである。

○産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門 主任研究員 重松紀生氏
 「地殻物質の脆性・塑性転移と地震発生・AD法」
 概要)熊本地震などの内陸活断層に沿う地震は、10 km ~ 15 km より浅い深度で発生する。深度に伴う地震発生の変化は、温度による岩石の脆性・塑性転移によるものと考えられる。特に大地震の震源は地殻浅部の地震発生領域の最深部に位置し、脆性・塑性転移は地震発生機構の理解には重要な意味を持つ。一方、今回話題となる AD 法は常温で10~20 nm 以下の微結晶からなる緻密な膜が得られる。この現象は断層面にしばしば観察される鏡肌と呼ばれる平滑な面の形成に近いように思われる。最近、人為的に作った鏡肌面において,常温で10~20 nm 以下の微結晶からなる緻密な膜が形成している状況が見出され,この状況についても報告する.