事業開催結果報告等

2013年7月19日掲載
第9回賛助会員交流会を開催しました

つくばサイエンス・アカデミー(SAT)主催の第9回賛助会員交流会を、平成25年6月10日(月)午後、つくば国際会議場402室にて開催しました。賛助会員企業(SATホームページ企業訪問記参照)を中心に、研究サイドの皆さんも含めて交流していただくことで、「知の触発」につなげようと、本交流会はそんな趣旨で開催しております。今回は合計で37名の方にご参加いただきました。

第9回交流会の内容は以下のとおりです。

1.SAT総務委員挨拶

2.SAT紹介・本交流会開催趣旨・経過説明・訪問企業紹介:溝口コーディーネーター

3.賛助会員講演(各30分 敬称略)
  ①「茨城経協の活動とつくばへの期待」
    (社)茨城県経営者協会                 専務理事 清水賢一
  ②「環境バイオテクノロジーを利用した環境保全と資源・エネルギー開発」
     (株)中外テクノス つくばバイオフロンティアセンター  所長 藤原和弘

4.つくば研究者講演(各30分 敬称略)
  ①「セシウム安定とじこめ材料」
    (独)物質・材料研究機構環境再生材料ユニット
                      触媒機能材料グループ  阿部英樹
  ②「日本における夏季降水量の将来変化と地形の関係」
    (独)防災科学技術研究所 災害リスク研究ユニット   常松展充
  ③「リアルタイム変形が可能な新肝切除シミュレートソフトの開発」
    筑波大学医学医療系消化器外科              大城幸雄        

5.まとめおよび交流の可能性について講演と懇談(溝口)    45分

6.閉会挨拶(SAT総務委員)

   

 
 丸山先生(SAT総務委員長)の挨拶の後、溝口から本日の議事・SATの紹介・交流会の主旨・訪問企業紹介などをさせていただき講演に入りました。

 賛助会員側として、まず茨城経協の清水専務理事から、経協の歴史・性格・技術開発支援など広くお話しいただきました。経協は経営者主体ですので、その面での活動が主ですが、技術開発支援ももちろん行っており、講演会や工場見学などが実施されているとのことです。最後に「独法化で垣根は低くなったと思うが、世界のつくばというだけでなく、茨城のつくばという面も」というお話がありました。
研究成果がじかに新産業創生に結ぶつく時代、あらためて、つくばへの期待を実感しました。

(株)中外テクノスの藤原所長のお話は、石油採掘後に油層内に取り残されている残油を、微生物を使って回収することにフィールドレベルで成功したというもので、こういうお話は耳新しく、大いに聴衆を刺激したように思います。

 研究者側の講演に移って、阿部先生のお話は、放射性廃棄物であるセシウムをいかに閉じ込めるかに関連し、最終的な封止材として構造制御した酸化チタン結晶(大きな孔)が有効であり、その構造制御をどのように行うかということに関するものでした。結晶化の過程でよく知られた補助物質を加えると、希望の孔構造制御が可能になるということで、放射性廃棄物の最終処分に関連して実用化が期待されます。常松先生のお話は、地球温暖化について基盤的なモデルがあり、それを使って、これからの日本の雨量変化を予測するというものです。地形を考慮すると西日本での雨量変化が大きくなると見込まれる、とのことですが、予測時期が80年後ということで、これについてはもう少し近未来の話にならないか、という意見・要望が出ていました。気候変動は、長い目で見れば生態系や生活様式にも影響してきます。このような検討を、一層精密に進めていただきたいと思いました。
 
大城先生からは、演題を少し変えて「次世代型3D-CG手術シミュレーション・システムの開発」ということでご講演いただきました。肝臓の一部を手術で切除すると、これは柔らかい臓器ですので変形してしまいます。どのように変形するか、それを有限要素法で解析するという話が出発点です。これ自体
、医工連携課題として非常に興味深いものですが、大城先生のグループでは、手術技法の訓練のためにこういう手法を使うということで、教育面での効果を強調しておられました。医学は、ちょっと考えるだけでも人体構造から機器・材料・システム・心理面までまさに総合科学ですから、教育面でも分野横断的に検討する課題は多いように思われます。

 5.のまとめと交流の可能性については、まず各ご講演に対しての追加質問をお願いし(阿部先生ご講演に対し1件)、その後、各講演」に共通する課題として、溝口の方から二つの論点①地球温暖化に伴う気候変化・生態系変化・生活条件変化、②有限要素法の衣服設計など広い分野への利用、をとりあげ議論に入りました。

①について、気候変動の農業関係への影響については検討が進んでいるとのご意見がありました。気象変動は、微生物の生態、温熱環境、防災など広い範囲で影響を与えます。つくばでは、将来を見据えた総合的な検討が可能と思われますので、SATが中心になって新しい取り組みを始めるべきかもしれません。

 ②有限要素法の活用については、広くソフトマテリアルの変形を取り扱うことが可能と思われますが、こういった点から出発して、理科教育に積極的にビジュアル化を取り入れていくことの重要性が議論されました。手術技法の継承や理化教育の充実など、ディジタル面での新しい取り組みが要請されているように思われました。

 第1部の交流会は、ほぼ予定通りに進行、最後にSAT総務委員の西村先生に本日の会議の意義についてまとめていただきました。


 5:45pmには、第2部として意見交換会(会場:サロンレオ)を開催し、これには22名にご参加いただきました。西村先生の乾杯挨拶から始まって、終始和やかな交流が続きました。異分野の研究者・技術者が気楽に交流することは、滅多にあることではないと思いますが、さすがつくばで、熱のこもった雰囲気であったように思います。総務委員の先生方のご参加も得て、本意見交換会は非常に有意義なものでした。
 閉会挨拶は、茨城経協の清水専務理事にお願いして(ご講演の上に急にお願いして申し訳なかったのですが)一本締めで締めくくっていただきました。
 ご講演の皆様、ご参加の皆様、ご協力有り難うございました。

                                         (SATコーディーネーター 溝口記)

付記:賛助会員の事業内容などはSATホームページの訪問記をご一覧ください。
http://www.science-academy.jp/visit/index.html
    また、研究者のご発表は、「TXテクノロジー・ショーケースinつくば2013(つくば国際会議場にて、    幹事機関防災科研)」でポスター発表されたものの中からお願いしております。