事業開催結果報告等

2014年7月1日掲載
第11回SAT賛助会員交流会報告      

第11回賛助会員交流会が、平成26年6月5日(木)午後、つくば国際会議場201A会議室にて開催されました。
異分野の交流を深めるためには、まず個人会員・賛助会員の皆さんが具体的にどのような研究・事業を展開しておられるか、それをよく知らなければなりません。
本交流会は、賛助会員企業の事業を紹介していただくとともに(SATホームページ企業訪問記参照)、研究サイドの皆さんも含め交流していただくことで、「知の触発」につなげよう、そんな趣旨で開催されております。今回は、合計で33名の方にご参加いただきました。

第11回交流会の内容は以下のようです。(敬称略)

Ⅰ.講演会                    
1.挨拶(SAT総務委員)
2.本交流会開催の趣旨説明・訪問企業紹介(溝口)                    
3.賛助会員講演(3機関、質疑含め各30分、敬称略)    
①浜松ホトニクス株式会社筑波研究所:「浜松ホトニクス研究紹介」
    筑波研究所所長代理 伊藤博康
② ㈱カスミ:「ソーシャルシフトの取り組み」
                     取締役執行役員   生井義雄  
③高橋興業株式会社:「事業紹介」   取締役営業管理部長 高橋良樹 
4.つくば研究者講演(2件、質疑含め各30分、敬称略)    
①「三次元集光を実現するホログラム・レンズとレーザー微細加工技術」
(一社)ニューガラスフォーラム筑波研究室    川島勇人
②「「光る花」がより光るための技術開発と利用について」
      (独)農研機構花き研究所花き研究領域    佐々木克友               
5.つくばにおける交流の可能性について小講演(溝口)   
6.総合討論                       
7.閉会挨拶(SAT総務委員)  
             
Ⅱ.懇親会 交流会終了後 5:40~7:00pm、国際会議場4階「サロンレオ」
        会費1000円
          
SAT丸山総務委員長の挨拶の後、溝口から本日の議事・SATの紹介・交流会の趣旨・訪問企業紹介などをさせていただき、講演に入りました。

賛助会員側として、最初は浜松ホトニクス㈱筑波研究所の伊藤所長代理によるご講演です。
浜松ホトニクス(以下、浜ホト)は光技術で世界的に有名な企業、この会社の研究開発体制・研究内容全般についてのお話がありました。浜ホトといえば「カミオカンデ」、微量光を検出する大型の高精度光電子増倍管の製造技術でおなじみですが、昔のTV受像機のような大型光電子増倍管の製作は、強度や熱膨張率を考慮したガラス素材の選択の他は、過去の様々なタイプの光電子増倍管製作の経験を基盤として、予想以上に短期間で、ほぼ設計通りに小柴先生の要求の特性目標を達成できたとのことで、浜ホトの技術レベルに改めて感銘を受けました。現在の事業分野はMEMSからライフサイエンスまで多岐にわたり、特に筑波研究所はバイオホトニクス研究の中核です。バイオと光は今後のキーワードでありましょう。このキーワードをもとに、異分野交流の核の一つとして大いにご活躍いただきたい、そんな風に思いながらお話をお聞きしていました。


賛助会員側の二番目のご講演は、㈱カスミの生井重役による「ソーシャルシフトの取り組み」です。ソーシャルシフトとは、フェイスブックなどのソーシャルメディアを活用して顧客の意見を吸い上げ、顧客目線での経営を行うこと、のように理解できると思います。生井講師のお話は、現場の経営者らしい熱のこもったものでしたが、具体的には上意下達的な縦型の組織でなく、自律的な従業員がお互い情報を共有し部門を超えて協力する、そのようにして顧客サービスの質を上げるということのようで、組織や経営手法に大きな変化が出てきているように思いました。質疑の中で会場から、部門を超えて協力し合うのはSATも同じ、というご意見が出ていましたが、私もその通りだと思います。SATの活動にも、ソーシャルメディア活用といった視点が必要になっているのかもしれません。

第三番目のご講演は、高橋興業株式会社高橋営業管理部長による同社の「事業紹介」です。同社は「つくば国際会議場」の管理運営団体(つくばコングレスセンター)のメンバーで、冷暖房や照明などの設備維持管理を担当しておられます。ビルの総合管理会社として、同社にはほかに清掃、警備など6つの事業分野を持っておられます。それぞれ手堅い事業展開の説明があったのですが、新しい事業展開については、新しい建物管理の手法として、清掃分野で清掃後汚水による環境汚染を防ぐための建物汚れ防止コンサルティングの導入を、また、広いスペース用の清掃ロボットの導入などを考えておられるようです。加えて、サービスのレベルを国際的に維持するため、品質管理、環境管理、情報セキュリティ・マネジメントの3部門でISOの認証を取得しているとのことで、現在の急激な社会状況変化への手堅い対応ぶりがうかがわれました。

10分の休憩後、研究者側の講演に移りました。最初は、(一社)ニューガラスフォーラム川島勇人博士による「三次元集光を実現するホログラム・レンズとレーザー微細加工技術」です。平面ガラスに特別な刻み目をつけて光を透過させると(ホログラム・レンズ)、受光部ではたとえばFという文字のみが光照射されます。このFを加工(削る)するためには、少しずつ切削するなど、ふつうは何らかのスキャンが必要です。しかし(材質によるでしょうが)、レーザーであれば一瞬で加工することが可能です。平面ガラスの透過光をすべてF字に集光するためには、回折現象を使うのでしょうか、ガラス面での複雑な刻み目(パターン)が必要になります。川島博士は情報科学の博士号をもっておられるようですが、なるほどと頷くところがありました。

研究者側第二のご講演は、花き研究所佐々木博士による「「光る花」がより光るための技術開発と利用について」です。
ノーベル賞受賞の下村博士によって発見された緑色蛍光タンパク(GFP)は、今回ご講演の「光る花」のベースにもなっています。新しい黄緑色蛍光タンパク質CpYGFPが、遺伝子工学的手法でトレニアという花の白色系統に導入されました。この花は遺伝子操作を受けているので、そのままの状態では自然界に放出することはできませんが、乾燥させたりしても、あるいはアクリル樹脂に閉じ込めたりしても蛍光が維持されます。したがって、ドライフラワーやインテリアなどに使えそうですが、さらに蛍光強度を強める努力が続けられており、もっと幅広い用途展開が期待できるように思われます。この研究は、初めは公式なものではなかったようですが、次第に公式に認められるようになったとのことで、自由な発想での研究もやはり大切、というように思われました。

最後の総合討論、講演での質疑が多く時間が少なくなってしまったのですが、私の方から、こういう交流会は、何かアイデアのヒントになった・共同研究の出発点になったというようにもっていきたいと持論を述べさせていただきました。また具体的に、レーザーホログラフィーをたとえば歯の治療に応用できるのではないかとコメントしたところ、会場の歯科医師の先生から、光による歯の治療はすでに試みられているが、ふつうは時間がかかる、レーザーで一発でできれば素晴らしいという応援のコメントがありました。
第1部の講演会は、少し時間がオーバーしましたが、最後にSAT総務委員の西村先生に本日の会議の意義についてまとめていただきました。議論は尽きないところがありますが、異分野の5件のお話をもとにご出席の皆様に熱心にご議論いただき、有益な講演会になりました。

5:45pmには、第2部として懇親会(サロンレオ)が開催され、これには20名にご参加いただきました。総務委員岡田先生の乾杯挨拶から始まって、終始和やかかつ活発な交流が続きました。幅広い分野からお集まりいただいているにもかかわらず、皆さん、打ち解けた雰囲気で熱心に議論していただきました。このように熱心な交流の積み重ねが、つくば発の新しい学術分野・新産業の開拓にもつながっていくのではないでしょうか?
閉会挨拶は、講演者の高橋興業高橋営業管理部長にお願いして、一本締めで締めくくっていただきました。
ご講演の皆様、ご参加の皆様、ご協力有難うございました。
(SATコーディネーター、溝口記)

付記:賛助会員の事業内容などはSATホームページの訪問記をご一覧下さい。
http://www.science-academy.jp/visit/index.html
また、研究者側のご発表は、「TXテクノロジー・ショーケースin つくば2014(つくば国際会議場にて、幹事機関KEK)」でポスター発表されたものの中からお願いしております。