事業開催結果報告等

2014年12月22日掲載
第12回SAT賛助会員交流会報告

第12回賛助会員交流会が、平成26年11月27日(金)午後、つくば国際会議場405会議室にて
開催されました。
異分野の交流を深めるためには、まず個人会員・賛助会員の皆さんが具体的にどのような
研究・事業を展開しておられるか、それをよく知らなければなりません。
本交流会は、賛助会員企業の事業を紹介していただくとともに(SATホームページ企業訪問記参照)、
研究サイドの皆さんも含め交流していただくことで、「知の触発」につなげよう、そんな趣旨で開催されて
おります。今回は、合計で24名の方にご参加いただきました。

第12回交流会の内容は以下のようです。(敬称略)

Ⅰ.講演会 (1:00~4:45pm)                   
  1.挨拶(SAT総務委員)
  2.本交流会開催の趣旨説明・訪問企業紹介(溝口)                    
  3. 賛助会員講演(3機関、質疑含め各30分、敬称略)    
    ①㈱エア・リキード・ラボラトリーズ:「エアリキードグループ紹介」
        グループマネージャー      横田二郎         
    ② 関彰商事株式会社:「セキショウグループ事業紹介」
       経営企画部 事業開発グループリーダー 上村祐一  
    ③㈱セノン:「災害時における公共施設のあり方」
            茨城支社常駐課司令補       似田貝伸五
  4.つくば研究者講演(2件、質疑含め各30分、敬称略)    
    ①「極微を覗く/宇宙を観る」
     高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所教授
                                  宇野彰二
    ②「生活デザイン支援のための生活機能データベース」
    (独)産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター
                   首席研究員        西田佳史                
  5.つくばにおける交流の可能性について小講演(溝口)   
  6.総合討論                       
  7.閉会挨拶
   
Ⅱ.懇親会 交流会終了後 5:00~6:45pm、国際会議場4階「サロンレオ」
        会費1000円
               

SAT小玉総務委員の挨拶の後、溝口から本日の議事・SATの紹介・交流会の趣旨・訪問企業紹介
などをさせていただき、講演に入りました。


賛助会員側として、最初は㈱エア・リキード・ラボラトリーズ、横田グループマネージャーによるご講演です。㈱エア・リキードは産業ガスのメーカーで、フランス系の国際企業、ラボラトリーズはフランス本社に直結する研究機関です。エア・リキードの世界的な事業展開(売上高2兆円で世界一の規模とのこと)、日本としての特徴や(半導体用ガスが多い)、Heガスが石油生産の副産物であり、Heを含まないシェールガスが伸びたため、一時期Heガスが不足したことなど、私は企業訪問で事前に話は伺っていたのですが、それにしても興味深いお話でした。
会場からは、燃料電池自動車に関連して水素利用についての質問が出ていましたが、水素ステーションについてはまさに準備が進んでいるというご返事でした。また円安の影響などについての質問もありましたが、さすが国際企業で、世界的に見れば大きな影響はないとのことです。
賛助会員側の二番目のご講演は、関彰商事㈱の上村グループリーダーによる「セキショウグループ事業紹介」です。セキショウグループは、エネルギー中心にガソリンスタンドや外車販売などの事業を展開、最近では霞ヶ浦にメガソーラーを設置、また介護事業にも乗り出しておられます。水素ステーションについては、もちろんいろいろ検討しておられますが、安全性の観点からの規制は厳しく、そのあたりはガス会社や地元自治体との連携が大切、ということのようです。
セキショウグループの経営方針は明快で、「地元貢献」です。地元での事業を充実させて雇用に貢献しながら、今後は海外にも目を向けていきたい、とのことで、今後の事業展開に大いに期待したいと思います。
三番目のご講演は、㈱セノン、似田貝司令補の「災害時における公共施設のあり方」。同社は大手の警備会社、「つくば国際会議場」の管理運営団体(つくばコングレスセンター)のメンバーとして警備を担当しておられます。セノンは空港警備を得意としておられるようですが、今回は、事業紹介というよりテーマを絞ったご講演でした。
企業でも公的な施設でも、年に一度は防災訓練が行われます。非常に大切なことであり有意義であると思うのですが、例えば、訓練に当たって整列する位置や、机、椅子などが普通に用意されています。しかし、しかし実際に大きな災害が起こったとして、そういう準備・対応は可能でしょうか?似田貝講師のお話は、想像力を働かせて、実際にありうる状況に対応することが重要、という点が骨子です。
いきなり切迫した状況を具体化するのは難しいと思いますが、講演をお聞きしながら、少なくとも、中心になる人が何人か日ごろから模擬訓練を行うことが大切というように思いました。
休憩後、研究者側の講演に移りました。最初は、KEK宇野教授による「極微を覗く/宇宙を観る」」です。今回は放射線計測に関連して、「覗く」方のお話が主になりました。物質の微細構造評価には-まさに極微を覗く話ですが-、最近では中性子などの素粒子やガンマ線が用いられるようになっています。そうすると、これらを精度よく測定する技術も必要になります。放射線計測には、従来、ワイヤチェンバーと呼ばれる装置が用いられていましたが、宇野教授のグループは、多数の孔の開いた基板を用意し、素粒子がこの孔を通過するときに充填ガスの電離を起こさせる気体電子増倍管方式を採用し、これによって測定精度が大きく向上したということで、今後の発展が期待される放射線の医療技術応用にも役立つように思われました。
ちょっと理解が及ばなかったのですが、液体希ガスを用いる場合は、放射線(素粒子)の進行経路が追跡できるとのことで、ガスの種類や純度など、ガス企業との連携が重要ではないかと思われました。
最後のご講演は、産総研西田博士の「生活デザイン支援のための生活機能データベース」です。人間の一生には、結婚、子供の誕生など節目節目の大きなイベントがあります。病気や事故にあう可能性もあるでしょう。そういったときに、こういうことが必要、こういう可能性がある、こういう成功事例がある、などといった対応策が提示されるようになっていれば、比較的スムーズに人生を切り開いていくことができるのではないでしょうか。
西田講師のお話では、こういった生活関連情報を標準データ化したり、様々な行政施策を標準データを用いて評価したりする試みは、世界的にも広がっているようです。今後、事例集積・生活機能のデータベース化では、データの集積方法の検討と使いやすいソフトの開発が重要になってくるように思われました。
最後の総合討論、まず私の方から、「こういう交流会は、何かアイデアのヒントになった・共同研究の出発点になったというような話につながることが望ましい」と持論を述べさせていただきました。
今回お願いした5件のご講演は、分野的には一見ばらばらですが、エア・リキードとKEKの気体電子増倍管、あるいは水素利用の観点でエア・リキードと関彰商事との関係などいくつか共通的な話題が指摘されました。また、西田講師のお話が関彰商事の事業展開に役立つのではないかなど今後の連携の可能性が指摘される一幕もありました。私個人は、警備事業にも西田講師のお話が役立つような印象を受けました。
第1部の講演会はほぼ予定通りに終了、私の方から本日の交流会についてまとめさせていただきました。議論は尽きないところがありますが、異分野の5件のお話をもとにご出席の皆様に熱心にご議論いただき、有益な講演会になりました。
私は、知の触発のためには議論を交わすことが重要、と思っているのですが、この交流会ではいつも、会場からたくさんの質問が出され、司会者としては時間通りの進行が難しいという嬉しい悩みを抱えてしまいます。これからも多数の皆さんにご参加いただき、活発に議論を交わしていただきたいと思います。
5:00pmには、第2部として懇親会(サロンレオ)が開催され、これには20名弱の方にご参加いただきました。丸山総務委員長の乾杯挨拶から始まって、終始和やかかつ活発な交流が続きました。 



幅広い分野からお集まりいただいているにもかかわらず、 皆さん、打ち解けた雰囲気で熱心に議論していただきました(写真参照)。このように熱心な交流の積み重ねが、つくば発の新しい学術分野・新産業の開拓にもつながっていくのではないでしょうか?知り合いの輪が広がっていくことも含め、SAT活動の重要性が改めて認識されます。
閉会挨拶は、講演者の㈱セノン、似田貝茨城支社司令補にお願いして、一本締めで締めくくっていただきました。
ご講演の皆様、ご参加の皆様、ご協力有難うございました。
                                        (SATコーディネーター、溝口記)


付記1:賛助会員の事業内容などはSATホームページの訪問記をご一覧下さい。
http://www.science-academy.jp/visit/index.html

付記2:研究者側のご発表は、「TXテクノロジー・ショーケースin つくば2014(つくば国際会議場にて、幹事機関KEK)」でポスター発表されたものの中からお願いしております。
テクノロジー・ショーケースのポスター発表は、興味深い話が満杯です。この賛助会員交流会では、ショーケースご発表の中から、今回の企業ご講演と直接関係があるわけではないが、今後なにかつながりが出てきそう、といったテーマを選ばせていただいています。今回は議論の途中で、お互いまた連絡を取り合いましょう、というお話が何件も出ており、SATの目的に沿った充実した良い交流会になったように思っています。