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第27回:(社)茨城県経営者協会
(社)茨城県経営者協会が入居している茨城県産業会館
茨城県経営者協会のロゴマーク
 つくばサイエンス・アカデミー(SAT)の賛助会員訪問、これまで製造業26機関の事業所・研究所を訪問させていただきました。製造業について一応の区切りになりましたので、これから非製造業を訪問させていただこうと思います。
 非製造業として、第1回は(社)茨城県経営者協会をお訪ねしました(10月18日、野上、溝口)。ご対応は同協会清水賢一専務理事です。今回は、具体的な技術課題を挙げてお答えを頂戴するのではなく、これからの社会のあり方・技術のあり方を議論させていただいて、その上で、SATはどのように進むべきか、あるいはどういう協力をお願いするかなど、これからのSATとしての取り組みが浮かび上がるようなインタビューをお願いしてみました。
 いつものように簡単なSAT紹介の後に、Q&Aを行いました。

Q:賛助会員としてご支援いただいておりますこと、まずはお礼申し上げます。
また関正夫会長には、SAT運営会議委員としてご支援いただき、特に江崎賞表彰では強力にバックアップしてくださっております。大変有難く思っております。
 ホームページを見させていただいたのですが、労務・財務・経営情報、講習会、研究紹介ツアーなど茨城県経営者協会では事業範囲が非常に広いように見受けられます。ただ、茨城の産業を盛り上げるという点ではSATと共通していると思いますので、本日は、貴協会の事業のうち、技術開発支援を中心に議論させていただき、最終的には、お互い協力できるような話につなげられればと思います。まず、事業内容・事業規模などについて概略説明をお願いいたします。

A:私どもの協会には、背景としてまず労働組合対策ということがありました。
戦後しばらく、労働者の激しい運動があり、経営を守るために設立されているのです。昔の日経連に加わっていたということですね。現在は経団連と日経連が合併しましたので、経団連に属しています。
 その後状況が大きく変わり、事業内容も広がっているのですが、モノ作りにシフトしたということでもありません。そこまでやらなくても、という声もあります。逆に活動を全般的に広げるべきという声もありますし、実際に技術開発に前向きな企業もあります。産学連携のきっかけ作りが焦点で、ここらあたりが限界でしょうか?現在の関会長が茨城県科学技術振興会議に出ておられて、県の施策に提言したいということで、平成16年に経協科学技術特別委員会が動き出しています。技術開発に真正面に取り組むのは、経協としては無理でして、見学会や研究者と知り合う機会作りで、それ以降は各社でやってもらう、ここは支援するという姿勢です。
 ほかに、「日本では産学連携がうまく行っていないが、それはなぜか?」などを調査検討して、結果を県に上げるとか、地元企業のレベル向上を目的に、銀行と共同で平成20年から「ものづくり交流会」を開催して、地元と大手の橋渡しをしたりするなどしています。何か光るものが出てくれば、それは大きいことだと思います。
茨城県経営者協会組織図
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Q:最近、孫と一緒に回転寿司へ行く機会があったのですが、注文のシステムが面白く家族で楽しめるようになっています。ITとすし職人技術の利用ということでしょうか。産総研では「サービス工学」を打ち出したりもしていますし、SATの賛助会員交流会では、農研機構花き研究所の研究者の「生け花を認知症対策に使う」という講演もありました。非製造業でも技術の重みが増えているように思います。経営者協会として、このような状況への対応をどのように考えておられるでしょうか?
A:サービスの生産性はまだ低い状況です。国としてもサービスの生産性向上は大きな課題と思います。それと、特に県北でつくばの情報が入らないということがあるように思います。アンテナが低いということでしょうか?日立地区では茨城大学工学部と交流しているようですが。

Q:つくばの研究所に対して、垣根が高いというお話をよく聞くのですが、発信の仕方が悪いのでしょうか?
A:独法化してしきいは低くなっていると思います。独法も努力しています。研究内容として、自分のところにすぐ結びつくもの、成長期にあるもの、こういうものに関心を持つ経営者は多いのですが、一歩進んだ次世代的な話になると発表会でも参加者が少なくなってしまいます。JSTとの発表会でも、企業より 研究支援センターの人が多いということで、ちょっとがっかりすることもあります。地元の中小企業では余裕がなく、勉強して話を聞くというようなことに はなかなかならないのです。
 壁があるとして、それがわかって応えてくれる研究者の情報、つなぎ合わせの役目がほしいと思いますね。表面に出ないでじかに研究者と接している人も多いと聞きます。

Q:そういう話ですと、これは私の考えなのですが、ポスドクを「サイエンスコミュニケーター」として雇う、ということはありませんでしょうか?シーズ側の難しい研究内容を分りやすく解説し、ニーズは「研究レベルに翻訳して」各機関に持っていってもらう。いずれにしてもわかりやすい説明役ということなのですが。若い人との出会いの場という面もあります。
A:ちょっと難しいですね。資金面で困りますし、処遇でも困るところがあります。経協は会員の会費だけで運営しているのですが、厳しい経済情勢が続いているので、退会が多くなっています。昔1000社くらいあったのが、今は700社くらい、最近少し増えていますが、厳しい状況は変わりません。職員も、もう5年も若い人が雇えていない状況です。ポスドクより若い人を雇いたいですね。
 それと、いろいろな分野の経営者が会員ですので、交流の場の設定ということでも説明役を設けるということでも、おんぶに抱っこでそこまでやる必要はないのでは、という意見もあるのです。
茨城県経営者協会の活動内容
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Q:他分野の話を聞いて、目が開かれるような思いをすることがあります。交流の場をつくるということは大切であるように思います。
A:話を聞いてその後どうするか、第2ステップはコーディネーターにうまくやってもらうという流れでしょうか?そういう働きには期待しています。われわれはやはり場作りまでと思います。

Q:交流会で問題がクリアになれば、そういう問題にふさわしい研究者をSATでご紹介することができるように思います。交流会・研究会の講師をお探しの場合も声をおかけください。SATとしてお役に立ちたいと思います。
 ところで茨城県は農業も工業も盛んですし、バランスの取れた豊かな県です。そういう基盤の上に、観光や医療も含めて輸出依存から内需依存への部分的シフトを考えても良いように思いますがどうでしょうか?

A:そういう方向性について、どこでどういう議論をするかということが大切です。リーダーシップが必要ですね。また、地域資源を活かすという面では商工会議所連合会さんや商工会連合会さんなどが中核となって農商工連携に取り組んでいますが、こうした取り組みが成果をあげられるよう、経済団体間の連携を一層強めていくことも大事だと思います。

Q:興味深いお話を聞いている間に、ずいぶん時間がたってしまいました。最後になりますが、今後も賛助会員でご支援願いたく思います。SATフォーラムやテクノロジー・ショーケースにもご参加ください。また、会員企業をショーケースや賛助会員交流会へお誘い願えないでしょうか?いろいろ注文して申し訳ないですが、ポスター掲示・ホームページでの広報もお願いできればと思います。
A:ショーケースには昔は少し資金を出させてもらっていましたし、実行委員会にも出ていたのですよ。ポスター掲示やホームページに載せたりするのも問題ありません。

Q:数年前のことが分らなくなっていまして、申し訳ありません。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

溝口コーディネーターと会談する清水賢一専務理事(写真右から)


(感想)
 茨城県経営者協会は、もとは労働組合対策ということですし、製造業ばかりでなくサービス業その他広い分野の経営者が参加しておられます。しかしその中でも、技術開発の重要性は強く認識しておられるようで、当方からの大上段に振りかぶった質問にも、ご迷惑であったかもしれませんが、従来の歩みを踏まえた上で、一つ一つに丁寧にお答えいただきました。
 多様な問題が輻輳するなか、技術開発については「交流の場つくり」に徹するという姿勢はよく理解できます。これからはどの分野でも世界的な競争は免れない時代、茨城県の特長を生かした産業発展のため、「交流の場つくり」にSATとして協力させていただきたい、そのように思いました。また、壁を越えるような姿勢を持った研究者とのつなぎの役がほしい、と言っておられましたが、SATはそういうことのお役に立つようにも思います。
 はじめて製造業以外の賛助会員をお訪ねするということで、どのようなインタビューをお願いするか、多少の戸惑いがあったのですが、結果的には十分議論させていただいたという満足感の残る充実した訪問となりました。有難うございました。

(溝口 記)


(参考)
社団法人茨城県経営者協会ホームページ
http://www.ikk.or.jp/


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