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第34回:株式会社 池田理化
株式会社 池田理化 つくば支店
 株式会社池田理化は科学機器・物品を扱う商社、つくばの研究機関は、公私を問わずどこも世話になっているのではないでしょうか?私(溝口)も現役時代、随分お世話になりました。実験器具を、「至急持ってきてほしい」と、無理を言ったことが思い出されます。
 研究テーマが大きく変化し、ディジタル化の急進展する今日、取り扱う機器・物品にも大きな変化があるように思われます。そういった変化を受けて、現在の事業内容はどのようになっているのか、興味がそそられます。また同社では、バイオテクノロジーに関心をお持ちのようなのですが、その理由は何か、この点もお聞きしたく思いました。
 平成24年7月10日、同社つくば支店をお訪ねしました(篠田、溝口)。同社からは、栗原営業部長、高石つくば支店長、山川営業企画課長にお付き合いいただきました。

 最初のご挨拶で、私が15年以上前、工業技術院の繊維高分子材料研究所、物質工学工業技術研究所に在籍していたことを申し上げたところ、高石支店長は営業マンとして顔を出していて下さったようで、当時の研究者の名前を出しながら話が弾みました。
 おかげさまで、SAT紹介からQ&Aに滑らかに入っていくことができたように思います。 


(Q&A)
Q:早速質問ですが、まず会社の規模、つくばの比重などについてご紹介ください。
A:事業内容としてはバイオ関係機器の販売を中心にしていまして、関東を中心に15の拠点があり、つくばの売り上げは全社の1割強です。

Q:ホームページを見させていただくと、機器販売だけでなく機器の製作も手掛けておられるようですが?沿革を見ると、初めのころは「株式会社池田理化学器械製作所」になっています。器具の製作が主だったのでしょうか?
A:確かに製作所から始まっていますが、どちらかというと企画したガラス器具などを依頼して作ってもらっていました。

Q: そうすると器具の製作は、注文生産ということでしょうか?
A:注文生産というほどではないですね。その後も、オーブン等の箱物の企画販売が主でした。たとえば、ビニルシートで覆ったガラス器具の乾燥棚「ドライングシェルフ」は、今でも販売を継続しており、累計10万台を超えております。オリジナルな製品ラインナップは持っていますが、全体の1%くらいで しょうか。
細胞用自動分注・洗浄システム CellWASHER APW-2000

Q:ガラス器具乾燥棚、それは昔よく見かけました。オリジナルなものというと、やはり研究者からのニーズにこたえてということでしょうか?
A:細胞用自動分注・洗浄システムでは、自動的に培地上澄みを捨てて培地交換します。これは研究者のニーズにこたえようとしたものです。

Q:機器製作での得意な技術分野は?
A:バイオ関係を中心に、十数人のメンバーでニーズにこたえようと企画を練っています。

Q:農学というかバイオを主に扱っておられるようですが、それはなぜでしょう か?東大に寄付講座を持っておられたこととも関係するのでしょうか?
A:昭和30年代、40年代は米つくりの時代でした。このころ、農水省の研究機関と害虫を集める装置「予察灯」や、土中の水分を計る装置「テンションメーター」の開発を行いました。そういうことがきっかけで、病虫害コントロール機器に深くかかわっていました。その頃からのご縁で、東大に寄附講座を設けたというわけです。ここでは、植物医師の育成を応援しています。

Q:最近10年で見て、研究機関での変化・研究内容の変化をどのように見ておられますか?
A:遺伝子解析の速度が非常に速くなりましたね。昔は、配列を読むだけでも競争でした。今は次世代シーケンサーによる解析です。また、シャーレのようなガラス器具の使用が極端に少なくなりました。使用するサンプル量が少なくなり、小さなプラスチック容器やセルカルチャプレートですんでしまうので、洗う必要もありません。ガラス器具乾燥棚の需要も少なくなってきました。
ドライングシェルフ DS-C

Q:企業理念として、「科学技術の発展を支援する事業を通して社会に貢献します」ということで、とても良いことと思いますが、具体的には?
A:最新の情報、特に機器情報をお伝えしていることでしょうか。それにより、研究がスムーズに進み、結果として新薬などの形で社会に貢献したいと考えております。

Q:研究者自身も情報は集めているのではないでしょうか?
A:もちろん研究者の方々も多くの情報を集めていらっしゃいます。しかし、新製品や海外メーカーの情報、海外機器展での情報はインターネットなどでは得づらいので、そういった情報を提供させて戴いております。

Q:逆に研究者からニーズ情報が得られるということもあると思いますが。
A:研究者からの「こんな製品があったら・・」という情報には敏感に反応し、様々なルートでご期待にこたえられるようしております。

Q:国際化への対応については?
A:輸出はありません。日本にない海外の優れた製品を輸入している事はあります。たとえば有機合成装置をハンガリーから輸入しています。外国人社員は今のところはおりません。もちろん、外国語を話す社員はおります。

Q:具体的になりますが、御社紹介に出ている熱可逆性ハイドロゲルというのはどういうものでしょうか?昔、研究室で手がけていましたので、興味があるのです。
A:弊社がサポートしているベンチャー企業の製品です。こちらの企業の製品は、植物栽培や屋上緑化に使える物もあり、CSRの一環とも捉えています。

Q:ラテックス手袋もオリジナル製品のようですが?
A:誰もが毎日使う物こそ、使い勝手の良い物であるべきだ、と考えて、特別に作ってもらっています。

Q:つくばの研究機関と研究面での交流はありますでしょうか?
A:先に述べた害虫関連ですが、農水省の研究機関と深くお付き合いさせて戴いており、その結果、光で害虫を集める「予察灯」や雌のフェロモンを用いて雄の蛾を集める装置など、国内唯一の製品を開発するに至っております。

Q:顧客からの注文がよいヒントになったということはないでしょうか?
A:そういう話は、昔の方が多かったように思います。今は余りありませんね。もちろん現場での交流はあり、使い勝手を直せないか、というような話を聞いた場合にはメーカーさんに報告してつなげています。

Q:SAT的な発想なのですが、御社のような商社さんは、研究機関での多くのシーズ、ニーズに近い位置におられます。そういう特性を生かして、研究機関同士の交流の窓口のような役割を果たすことができると思うのですが、いかがでしょうか?
A:今はまだ実現できていませんが、今後できればと思います。

Q:つくばテクニカルセンターの機能は?
A:今、つくばでの開発はちょっと止まっています。先ほどの話のように、市場の状況が大きく変わってきており、次のステップを考えているところです。
対話風景

Q:最近の資源高、エネルギー高あるいは環境問題への対応については?
A:さいわい、当社は製造していませんし輸出もないので円高の影響はほとんどありません。環境・資源保護の観点からISO14001を取得し、廃棄物のリサイクルには力を入れております。

Q:今後の事業展開、研究展開についてお願いいたします。
A:改めて農業の大切さを考えたいと思いますし、製薬関係への展開も考えたいと思っています。

Q:つくばへの期待をあらためて?
A:つくばにある事業所の見学会などをやっていただけるとより親しくなれると思います。食品業界などでは、そういう事をやった事例があるようですが。

Q:本日は長時間有難うございました。これからも賛助会員としてSATご支援をお願いいたします。また、ショーケースやSATフォーラムなど、ぜひお付き合いください
A:こちらこそよろしくお願いします。SATフォーラムなど、ときどき顔を出させていただいています。

Q:それは有難うございます。


(感想)
 池田理化の創立当初から最近までの事業内容変遷を伺い、日本の科学・技術の大きな流れが実感できたように思います。またたとえば、「分析の精度が上がったために、試料が少量で済むようになり、そのためシャーレのようなガラス器具の使用が減ってきている、合わせて乾燥器の需要も減ってきている」、などという話には、営業上は大変なことと思いますが、研究内容の変化、広くは社会状況の変化が反映されているようで興味が尽きない思いがしました。
 営業活動は、生物系を主にしておられるようです。農業・食品研究は今後重みを増してくるでしょうし、それは十分理解できますが、SAT的には、医工連携のような境界領域にももっと目を向けていただければと思います。
 また、やり取りの中で、シーズ・ニーズの両方の情報が得やすい商社の特性、と申し上げたのですが、そういう情報はSATにとっても非常に大切なものです。池田理化さんはじめ商社の皆さんとの交流を深めるべき、というように思いました。
(溝口記)

(参考)
株式会社池田理化 ホームページ
http://www.ikedarika.co.jp/


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