VISIT MEMBER'S ROOM


第42回:家田化学薬品株式会社 筑波支店
(写真1) 家田化学薬品(株) 筑波支店
 例年と比較して冷え込みが早く紅葉も早いかなと思っていましたが、その後冷え込みも緩み、つくばの幹線道路沿いの街路樹も色づくのが遅いように感じる今秋でした。11月13日午後、筑波技術大学のすぐそばに立つ家田化学薬品(株) 筑波支店(写真1)にお邪魔しました。今年8月1日に株式会社家田グループ本社を持株会社とし、そのグループ事業会社という新体制に移行したばかりです。新体制での今後の抱負を含めてお話を伺うことが出来ました。対応頂きましたのは、取締役営業副本部長徳田清明様、筑波支店長代理・課長三上 剛様です。SATからコーディネータの伊ケ崎が伺いました。
 取り扱っている商品は試薬、臨床検査薬ばかりではなく、バイオ関連などの理化学機器・装置、消耗品、家田オリジナル商品も含めての総合商社であることが家田化学薬品(株)の特徴です。またその役割を迅速かつ確実に果たすために、納品については営業とは別の部署を配置し、ルート納品(注:納入時間を考慮して、道順(ルート)を決め、確実に試薬等を納品すること)をおこなっているとのことでした。納品を営業とは別部署が行うために、営業部隊はお客様との接触を密にとることができ、お客様のニーズをしっかりと把握することができる体制を構築しています。それらの体制によって、お客様が要求される試薬、機器を迅速・確実に納入することを商社としての基本としつつ、お客様とのコンタクトを密にとり、ニーズを把握し、そのニーズを総合商社としての強みを生かして実現していくことが商社として重要との認識のもとに企業運営が実施されています。
 お客様への情報提供は、独自のカタログ連携サイト「試薬ホームズ」やe-laboserviceを活用し、様々なコンピューターシステムに対応すべく社内ネットを構築しているとのことです。
 SAT設立後、早い時期に賛助会員になって頂いています。これまでのご支援に感謝すると共に、今後ともご支援をお願いしたいという挨拶の後、インタビューに入りました。

Q:貴社の設立、会社概要(グループ本社制の体制、簡単な業務内容、社員数等)についてお願いします。
A:家田化学薬品株式会社は研究用試薬のメーカーとして昭和25年に設立されました。その後、昭和37年には業界トップメーカーの和光純薬工業株式会社の代理店として、試験研究用試薬及びバイオ関連機器、理化学機器、臨床検査薬の販売を行い、昭和46年に販売拡張の為、「家田化学グループ」を発足し関東エリアを中心に事業会社を順次設立して参りました。更に昭和51年には家田貿易株式会社を設立し、海外の最先端機器の輸入販売並びに国内開発品を元に全国に販売網を構築し、全国大学、国立研究所、製薬会社、食品会社研究所に先端バイオ機器、家田オリジナル商品を提供しております。
 今年、創業65年を期にお客様サービスの向上とガバナンス強化を目的として、従来からの分社スタイルより会社を統合し支店・営業所のスタイルへと変更させて頂く事に致しました(図1、図2)。
 商品アイテムは、幅広いメーカー製品を取り扱い、時代の流れを的確にキャッチし最新の顧客ニーズや情報を的確に収集し様々な商品でお客様の多様なご要望にお応えする事が出来ます。Quick Action,Quick Deliveryの基本方針を基に大学、研究所を始め各企業の研究機関に必要な試薬と各種機器を安心と安全を込めてお届けします。家田化学薬品株式会社の全従業員数は170名で、筑波支店は34名です。
(図1) 株式会社家田グループ体制
(図2) 家田化学薬品(株) 新組織

Q:当初は研究用試薬のメーカ−と言われましたが。
A:バルクの状態から小分けして、パッケ−ジングして販売するということです。

Q:社名から受ける印象は化学薬品専門のディーラ(商社)と言うことになろうかと思いますが、薬品以外では機器、装置なども販売されていますね。いつ頃からですか。
A:会社発足当時は、研究試薬を中心に事業展開を行って参りました。昭和51年家田貿易株式会社を設立した時から試薬と機器、消耗品の総合サービスを念頭に事業拡大を図って参りました。

Q:筑波にはいつ頃進出されましたか。
A:昭和54年に筑波家田化学株式会社を設立しました。

Q:昭和54年と言えば、当時の通産省や農林省の国立研究機関の筑波移転と同じ時期ですね。当時から国立研究機関との取引は多かったと言うことでしょうか。
A:国立研究機関との取引はありました。但し、民間と大学・公的研究機関との取引の割合は当時も今も7:3くらいで変わってはいません。

Q:筑波に進出された動機は。
A:国立の多くの研究機関が筑波に移転し、筑波研究学園都市を国策としてつくるということで、そこで事業展開をしていくということです。

Q:今年8月1日に持株会社とされ、グループ企業として家田化学薬品株式会社になった理由はどのようなものでしょうか?
A:お客様へのサービス向上とガバナンス強化が目的です。

Q:昭和46年「家田化学グループ」が発足したとありますが、その当時はあくまで別企業だったわけですね。それを一つの企業としての持ち株会社株式会社 家田グループ本社体制にされ、事業会社間の連携を取りやすくしたということですね。
A:その通りです。昭和46年「家田化学グループ」の時代では、決算時期等も異なる分社体制であり、それを今年度に一つの企業体としました。グループ事業会社間の連携を強め、お客様へのサービスをより向上させると共に、ガバナンスを強化することができる体制にしたと言うことです。
(写真2) オートクレーブバック(商品名:ラブバック)

Q:時代と共に業務内容の変遷があったと思いますが、大きな流れとしてどのようになりますか。
A:お客様のニーズに応えた製品(写真2:オートクレーブバック)の提供ということが増えています。受託研究の依頼や、ライセンス等の情報提供、管理についての問い合わせなどです。よりスピーディーな実験方法や コストを掛けない方法の提供や、正確な情報をいち早くお届けする事が求められております。

Q:試薬や理化学機器、装置を納入するだけではなく、研究現場のニーズや企業のニーズに対応するというような変化があったということですか?受託研究の依頼が研究者からあった場合、企業を紹介するとかいうことですか?
A:そうです。弊社では通常の納品は営業とは別部隊が受け持っています。営業はお客様の研究内容についての知識を持っていますので、アポイントをとり、新製品の紹介などをさせて頂いたり、実験で用いる試薬を今までは自身で合成していたけれども企業に委託したいとの要望があった場合に企業を紹介するなどの仕事に力を入れているということです。企業・企業間での受託研究の依頼もあります。

Q:そうしますと、研究所の産学官連携コーディネータ的な役割を民間の立場から行っているということですね。産学とか産産連携を。
A:そうです。試薬等の製造量を増やしたいので、製造してくれる企業を紹介して欲しいとか、ある機能を付加した装置を納品して欲しいとか。DNAシークエンサー、抗体製造装置、タンパク解析装置などでの例があります。

Q:受託研究の依頼、新しい機能を付加した製品の納入とかの仕事が増えてきているということですね。商社全般としてそのような業務が増えているとみて宜しいのですか。
A:そのような割合が全体として大きいかというと、試薬、消耗品、機器や装置の納入の方が比重は大きいですが、増加傾向にあるということです。商社全般としては企業によると思います。
(写真3) S-9(変異原性試験用試薬キット)
(写真4) ラボ用ろ過精製装置KRUi

Q:商社としまして御社の特徴をお聞かせください。
A:研究用試薬から遺伝子解析、抗体関連、蛋白発現等の受託、臨床検査薬、消耗品、理化学機器・装置を含めた研究環境をトータルでサポート出来る事です。試薬、消耗品、機器・装置の総合的なサービスを提供することができる総合商社ということです。試薬にしても臨床検査薬、ライフサイエンス研究用試薬等(写真3)を含め、幅広く取り扱っていますし、タンパク結晶化試薬等、ラボ用ろ過精製装置KRUi 等(写真4)の家田オリジナル商品もあります。
 納品業務に於いては、営業とは別に社内に専門部署を設け、日常のお客様のご要望をお聞きし、ルート納品(注:納入時間を考慮して、道順(ルート)を決め、確実に試薬等を納品すること)を実現していることも特徴と言えます。決まった時間に全てのメーカーの製品を納品できる事や緊急時の納品に対しお客様のご要望にお応えすることに努めています。そうすることで営業は通常納品を行わず 顧客一人ひとりへの情報提供や要望を聞くことに時間をかけ より深いサービス、提案を提供できる体制を構築していることです。

Q:現在の業務内容を多少詳しく紹介ください。筑波支店の占める比重はどのくらいでしょうか。
A:多少繰り返しになりますが、研究用試薬、理化学機器、受託、消耗品の販売だけでなく、ソフトやライセンス等、研究に必要なソフトの販売並びに情報の提供も積極的に行っています。
 そのエンジンとしては独自のカタログ連携サイト「試薬ホームズ」(注:家田化学薬品(株)が作成した首都圏最大の試薬関係者向けの情報検索/発注サイト)やe-laboservice(注:試薬・理科学機器の詮索・発注ができる研究者のための全国的な総合購買サイト)を活用し、様々なコンピューターシステムに対応すべく社内ネットを構築し、お客様とのBtoB,BtoC環境に力を入れております。
 筑波支店の占める割合は全体の25%です。他の支店、営業所では検査センターや病院等へ臨床検査薬、遺伝子関連機器の販売も行っております。

Q:化学薬品で取り扱ってきた分野の移り変わりはあったと思いますが。
A:バイオテクノロジーにかかわる分野の研究が日進月歩で、今後はテーラーメイド医療や再生医療などの分野が注目を集めており、弊社も取り組んでおります。

Q:販売を通して研究者との接触があると思いますが、特に留意している点はありますか。
A:例えば積極的に研究者と接触し、ニーズを聞き取る活動を行い、取扱品数の増加に努めています。 情報の管理が何よりも重要です。広めた方が良い情報と研究者・技術者との打ち合わせで得たそうでない情報を選別し、お客様に信頼して頂ける情報管理に留意しています。情報の管理に関しましては社内教育でも力を入れています。

Q:取り扱う薬品、機器・装置等の変遷などに関し、社員教育、人材育成が必要になろうかと思いますが、社員教育、人材育成に関する考え方をお聞かせください。
A:人材は財産です、若いうちは広く色々な経験を積んでもらいたいと思います。座学も大切ですが、現場での経験が一番です。より多くの人とのかかわりが 社員教育の根幹になります。もちろんメーカの新製品情報の勉強会、学会への参加なども重要と考えています。

Q:社員教育、人材育成でつくばの公的機関(大学、研究機関、県や市、法人等)に要望をありませんか。
A:要望する事は、公的機関による研究に対し、民間研究機関の研究者が参加できるような研究分野毎に分類した研究講演会の開催等です。そのような場合には、集客にも貢献したいと思います。積極的に営業部門を参加させ、顧客のニーズに応えて行くために活用したいと思います。
インタビューに答える徳田取締役営業副本部長(右)と三上課長(左)

Q:つくばにおける企業間の交流組織などには加入などしていらっしゃいますか。また、各種交流会などへの参加は如何ですか。
A:SAT以外では、つくば市危険物安全協会、茨城県試薬業協議会、茨城県医療機器販売協会、一般社団法人日本試薬協会、一般財団法人バイオインダストリー協会等に参加しています。必要な情報がそのような組織から得ています。

Q:つくばサイエンス・アカデミー(SAT)の賛助会員としてのご支援に感謝致します。賛助会員になられた動機についてお聞かせください。
A:情報を頂き、筑波の研究に貢献することが出来ることです。つくば研究学園都市という世界的に特徴のある研究開発拠点にいますので、サイエンスの未来を見詰め、日々の営業活動に活かして参りたいと思いました。

Q:SAT事業(SATフォーラム、スタイル交流会、賛助会員交流会など)への参加は如何でしょうか。
A:例えば賛助会員交流会などに参加しています。今後とも機会を見て参加したいと思います。

Q:SAT活動に対する満足度は如何でしょうか?
A:各種事業の開催や会誌発行等で満足しています。著名な先生の講演会などの企画や研究者の方がどのような研究をされているのか等の情報が提供されますので、それらを営業活動に生かすことができます。

Q:SATからの情報について、過不足感は如何でしょうか。
A:会誌などの情報雑誌やHPなど充実していると思います。会誌に関しましては社内で回覧しています。

Q:最後にSATへの要望、こんな催し物があったら良いのにということなどありましたら、お願い致します。
A:子供向けのイベント 家族で参加できるイベント 未来の研究者を育成するイベントなども企画して頂ければと思います。

SAT:今後ともSATへのご支援をお願い致します。とともに、各種事業への参加もお願い申し上げます。 本日はありがとうございました。
(伊ヶ崎記)


家田化学薬品(株)のHP: https://www.ieda.co.jp/



[ 一覧へ ] [ ホームへ ]
Copyright (c) Science Academy of Tsukuba. All Rights Reserved.