「インフラ×〇〇」というテーマは、インフラ技術に新たな視点を取り入れ、社会全体の発展に貢献するという思いから設定した。本会議では、さまざまな分野の専門家が集い、それぞれの知見や技術を共有し、新しい連携の可能性を探る。このような異分野の交流・気づきを通じて、インフラのさらなる進化を促し、ひいてはより良い世の中の実現に繋がることが本講演の目的である。
第一部 | 特別講演 司会 土木研究所 理事 久保 和幸 |
16:00~ | 1.挨拶・趣旨説明 土木研究所 理事長 藤田 光一 |
16:10~ | 2.(インフラ×地質) 地質図は社会の基礎となるベース・レジストリ 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 連携推進室 連携オフィサー 斎藤 眞 |
16:22~ | 3.(インフラ×生物多様性) ネイチャーポジティブの実現を支える観測と評価 国立環境研究所 生物多様性領域 室長 角谷 拓 |
16:34~ | 4.(インフラ×材料科学) インフラの中のナノ世界を視る 物質・材料研究機構 若手国際研究センター センター長 兼 構造材料研究センター NIMS特別研究員 土谷 浩一 |
16:46~ | 5.(インフラ×宇宙) ALOSシリーズによるインフラ変位監視 宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門衛星利用運用センター 技術領域主幹 川北 史朗 |
17:10~ | |
第二部 | パネル討論 モデレーター:土木研究所 理事 久保 和幸 パネラー :斎藤 眞、角谷 拓、土谷 浩一、川北 史朗、藤田 光一 |
挨拶・趣旨説明 土木研究所 理事長 藤田 光一氏
地質は地下を作る地層・岩石の性質と相互関係のことで、ブラタモリで少しは認知されましたが、これまでは多くのユーザーが地質コンサルティング会社でした。しかし、地質は資源、防災、各種立地、環境、金融、農業、観光など多くの分野で活用されるべき情報です。紹介する産総研地質調査総合センターの20万分の1日本シームレス地質図は、社会で最も活用されているデジタル地質情報で、まさに国のインフラ(ベース・レジストリ)です。

斎藤 眞氏
産業技術総合研究所 地質調査総合センター連携推進室 連携オフィサー
講演者の略歴
名古屋大学理学部地球科学科卒業。同大大学院を中退し、通商産業省工業技術院地質調査所入所。博士(理学)。主に九州〜南西諸島の地質図作成のための研究を行った後、日本全国のデジタル地質図である20万分の1日本シームレス地質図の編纂に携わる。研究とともに1990年代後半から地質情報の社会実装にも取り組んでいる。目標は「地質が身近にある社会を創る」。
2030年までに生物多様性の損失を止め、自然を回復の軌道に乗せること(ネイチャーポジティブ)が社会の共通目標になりつつあります。その実現のためには、複雑で多面的な生物多様性を測り、その変化を検出するための技術が必要になります。この講演では、そのような生物多様性の指標化に関する最新の研究や取り組みの成果についてご紹介します。

角谷 拓氏
国立環境研究所 生物多様性領域 室長講演者の略歴
東京大学農学部卒業。同大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻を修了。博士(農学)。同研究科特任助教を経て、2009年より国立環境研究所に勤務。2020年より現職。生物多様性の広域評価や保全に関する研究に従事。環境省などの各種委員を務めている。
全長4kmの明石海峡大橋を支えているのは数10nmの厚さの鉄/鉄炭化物の層状構造である。鉄筋コンクリートでできた構造物の寿命を支配するのは数μmから数nmと言われるセメント内の空隙を通じた水分や塩化物イオンの移動である。そして鉄筋の腐食は黒皮と言われる酸化膜と地金の間にある微細なすきまから始まる。巨大なインフラ構造物であってもその性能を支配するのは材料の中のミクロ〜ナノの構造であり、その劣化も常にミクロ〜ナノスケールの現象から始まる。

土谷 浩一氏
物質・材料研究機構 若手国際研究センター センター長兼 構造材料研究センター NIMS特別研究員
講演者の略歴
1991年ノースウェスタン大学大学院博士課程修了(Ph.D)。北海道大学大学院工学研究科助手、豊橋技術科学大学准教授を経て、2007年より物質・材料研究機構(NIMS)。グループリーダー、元素戦略材料センター長、構造材料研究拠点長などを歴任し2018年より現職。主として形状記憶合金、チタン合金、金属ガラスなどの金属材料の研究に従事。NIMSインフラ構造材料パートナーシップの事務局長も務める。
JAXAの人工衛星ALOSシリーズは、災害時の状況把握に重要な役割を果たしています。特にALOS-2・4に搭載されたLバンド合成開口レーダー(SAR)は、干渉解析により地表面の微細な変動を検出することができます。この技術は、橋梁やダムなどの重要インフラの変位をミリメートル単位で計測することを可能とし、効率的な維持管理に貢献します。本講演では、ALOS-2・4を活用したインフラモニタリングの実例と、その有効性について解説します。

川北 史朗氏
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門衛星利用運用センター 技術領域主幹
講演者の略歴
東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻修了(博士(工学))。1998年宇宙開発事業団(現 宇宙航空研究開発機構)に入社。技術研究本部にて、薄膜太陽電池の宇宙応用に関する研究開発に従事。その後、産業技術総合研究所客員研究員(2014~2016年)、九州工業大学非常勤講師(2015~2019年)を兼任。2016年より、現センターにて人工衛星を用いた防災事業に従事し、宇宙技術を活用した減災活動や国際協力に貢献。

久保 和幸氏
土木研究所 理事モデレーターの略歴
京都大学大学院土木工学専攻修了。1990年建設省(現 国土交通省)入省。建設省土木研究所と国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)で、道路の舗装について、排水性の高い舗装材料、舗装の維持管理、リサイクル等の舗装技術全般の研究開発、技術基準のとりまとめに携わる。この間、国土交通省本省、国土交通省九州地方整備局宮崎河川国道事務所長、国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所長を務め、2023年より現職。

藤田 光一氏
土木研究所 理事長パネラーの略歴
東京工業大学大学院土木工学専攻修了。博士(工学)。1983年建設省(現 国土交通省)入省。建設省土木研究所と国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)で、洪水流、土砂移動と河道制御、河川・構造物管理および環境保全の技術体系化、気候変動適応を含む治水フレームに取り組む。この間、総合研究開発機構研究員、建設省中部地方建設局三重工事事務所長を務め、研究開発と現場実装・技術政策形成との双方向触発の活性化にも注力。国総研所長、河川財団河川総合研究所所長を経て、2022年より現職。